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竹林軒出張所

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『ドラマ 東京裁判』(1)〜(4)(ドラマ)

ドラマ 東京裁判 第14話(2016年・NHK)
演出:ピーター・フェルフーフ、ロブ・キング、高橋陽一郎
脚本:ロブ・キング、高木徹、ケース・ファンバイナム、マックス・マニックス
出演:ジョナサン・ハイド、ポール・フリーマン、マルセル・ヘンセマ、イルファン・カーン

東京裁判の判事側の葛藤

b0189364_20270779.jpg 極東国際軍事裁判(通称、東京裁判)で判事を担当した11カ国の法律関係者にスポットを当てたドキュメンタリードラマ。
 東京裁判は、ニュルンベルグ裁判に準じて、戦勝国が敗戦国の首脳を裁いた法廷で、法に準拠して不正を断罪するという建前に立っているが、実際には、1928年のパリ不戦条約(!)あるいは事後法に準拠して個人の罪を裁いたりなど、あちこち矛盾だらけである。目的は、敗戦国への政治的な介入であり、戦争を起こした人々が再び指導者として戻って来れないようにするというものである。したがって、裁判みたいな建前をとっていても始める前から結果はわかっており、基本的に起訴された被告人は有罪という前提に立っている。
 連合国から指名された各判事も当初は連合国側のこのような意向を汲んで、ニュルンベルグ裁判同様、その方向で決着を付ける予定だったが、インドのパール判事やオランダのレーリンク判事がこの裁判の正当性への疑問を提示したあたりから紛糾しはじめ、途中ウェッブ裁判長が帰国させられるなど、いろいろな問題が噴出して、結局結審するまでに2年以上かかってしまう。そのあたりのいきさつをドラマ仕立てで紹介するのがこのドキュメンタリードラマである。主人公はレーリンク判事に設定されている。50分×4回シリーズである。
 法廷のシーンは、実際の映像をカラー化したものが使われており、判事の部分だけがドラマ用に撮影された映像になっている。新しく撮影された判事の映像は、さまざまな視覚効果を加え、実際の当時の映像との違いがわかりにくくするというような心憎い演出も加わっており、法廷シーンはなかなかのものである。
 ただしどうしても判事たちの心境の変化や葛藤を中心に描くため、裁判自体がどのように進行したかがよくわからない。結局判事たちの人間ドラマに終始してしまっている。もっともこれはどこに焦点を当てるかという問題であるため、仕方ないとも言える。
 東京裁判を描いたドキュメンタリーには、小林正樹が監督した『東京裁判』という映画があって、裁判の進行を時系列で描きながら、パール判事の反対意見なども詳細に紹介していて、非常に印象的な優れた作品になっていた。このドラマは、あの作品とは少しアプローチが違うが、しかしそれなりに見所もあり、ドラマとしても面白く仕上がっている。何より一部の判事の法律家としての立場と、戦勝国の人間として政治的な役割を果たすべきとする立場との葛藤がなかなか興味深い(特にレーリンク判事。だから主人公にしたんだろうが)。ドラマの中では、レーリンク判事と(『ビルマの竪琴』の作者である)竹山道雄や在日ピアニストのエタ・ハーリッヒ=シュナイダーとの交流なども描かれて、彼の人間らしさがアピールされている。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『コミック昭和史 第5巻、第6巻、第7巻、第8巻(本)』
竹林軒出張所『昭和史 戦後篇(本)』
竹林軒出張所『カラーでみる太平洋戦争(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『カラーでよみがえる東京(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-09-01 07:26 | ドラマ
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