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竹林軒出張所

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『季節が変わる日』(ドラマ)

季節が変わる日(1982年・日本テレビ)
演出:久野浩平
脚本:山田太一
出演:八千草薫、岡田真澄、小池朝雄、早川勝也、キャロライン、ハナ肇

教育についていろいろ考えるドラマ
なかなかの力作


『季節が変わる日』(ドラマ)_b0189364_08131479.jpg 不登校の息子をある山間の寄宿学校に入れることにした女性(八千草薫)と、非行の娘を同じ学校に入れることにした男性(岡田真澄)が恋愛関係に陥っていくというストーリー。この学校というのが軍隊式で、子ども達のヤワな根性をたたき直すというコンセプトの施設。おそらく戸塚ヨットスクール(竹林軒出張所『平成ジレンマ(ドキュメンタリー)』を参照)がモデルだと思われるが、ドラマではこのような施設に対する批判精神も顔を覗かせる。一方で荒れる子どもをお払い箱にした親が見せる安堵感なども描かれ、少し辛辣さも感じる。
 これも日テレ製作のドラマで、ややリズム感を欠いている上、ホテルのベッドシーンなんかは(以前の日テレドラマらしさを感じるような)ちょっと気恥ずかしい演出で、ちょっとどうよと思うようなものであったが、先が読めないストーリー展開はさすが山田ドラマである。子どもを寄宿学校に入れて親たちがよろしくやっているということには反撥も感じるが(主人公の口からもそういうセリフが語られる)、しかしこの親たちにしても、不倫ではないわけだし恋愛したって問題はないわけで、こういう(視聴者という)第三者による(一方的で)禁欲的な考え方は理不尽である。本来は。だがまあそういう感慨を持つのも自然といえば自然で、一方でそういう紋切り型の考え方をしてしまう自分が何やらみっともなくもあり、なかなか厳しいところを突かれたという感じが残る。かくのごとく、いろいろ考えるところが多いドラマで、そのあたりも山田ドラマらしいと言える。
 教育の問題は難しいし、特にこのドラマが製作された時代は不登校に対する定見がなかったこともあり、親も社会も手探り状態であったと思う。教育の歪みが校内暴力などという形で現れたのもこの少し前の時代で、教育については難しい問題が山積みであった。答えは簡単に見つからないし、今も正答があるわけではないが、社会が以前より柔軟に対処しているのは実感できる。それは教育に対して真摯に向き合った人々の成果でもあるわけで、こういった問題意識の高いドラマも一役買っていたのではないかと思う。実際山田太一には教育論(『親ができるのは「ほんの少しばかり」のこと』)もあり、これも大変興味深い本であった。子どもが提示してくる問題に対しては真摯に向き合うというのが唯一の方策なのかなとも思うが、このドラマでも何となくそういう方向性が示されていたように思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『親ができるのは「ほんの少しばかり」のこと(本)』
竹林軒出張所『男たちの旅路 第2部「冬の樹」(ドラマ)』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『平成ジレンマ(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-08-10 08:13 | ドラマ
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