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竹林軒出張所

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『大病人』(映画)

b0189364_21032163.jpg大病人(1993年・伊丹プロ)
監督:伊丹十三
脚本:伊丹十三
撮影:前田米造
出演:三國連太郎、津川雅彦、宮本信子、木内みどり、高瀬春奈、熊谷真実、田中明夫、三谷昇、高橋長英

ドラマとしては薄っぺらだが
医療に対する問いかけは厳しい


 伊丹十三が医療の問題を問う野心作。『病院で死ぬということ』が参考文献として挙がっていたことからもわかるように、誰のための医療か、誰のための治療か、誰のための病院かという問題提起がこの映画の基調である。テーマ自体は、近藤誠が主張しているような内容で、今となってはそれほど珍しくないが、時代が93年であることを考えると、かなり先進的と言える。しかも医者が看護師に対して「看護婦のくせに医者が決めた治療方針に口を出すな」などという差別的な言動をしたりして、当時の医療の状況を適確に反映しているような気がする。ただこの映画では、看護師が「看護婦のくせに」という一言に烈火の如く怒り、結局医者が折れるという顛末になる。そういうディテールも面白いし「患者が医者に殺される」と言わんばかりの表現も面白い。
 とは言っても、伊丹映画らしく、ドラマ的な重厚さは欠けている。伊丹映画の多くにはサブプロットめいたものがないため、製作者が面白いと思っていることを紹介していくだけで終始してしまう傾向がある。こういう映画を「一本道」とでも名付けたら良いかも知れないが、どこかバラエティ番組的で、そういう部分が物足りなさに繋がる。この映画も例外ではないが、ただし死後の世界を表現した映像などが出てくるなど、見所が多いのも確か。登場人物が割合ステレオタイプなこともありドラマとしては物足りないが、バラエティとして見ればなかなか見所が多い。また演出にも破綻がないため、見て楽しんでいろいろ考えるための素材と考えればこれ以上のものはないかも知れない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『病院で死ぬということ(映画)』
竹林軒出張所『がん放置療法のすすめ(本)』
竹林軒出張所『どうせ死ぬなら「がん」がいい(本)』
竹林軒出張所『タンポポ(映画)』
竹林軒出張所『マルタイの女(映画)』
竹林軒出張所『ミンボーの女(映画)』
竹林軒出張所『スーパーの女(映画)』
竹林軒出張所『小説より奇なり(本)』

by chikurinken | 2017-07-18 07:00 | 映画
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