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竹林軒出張所

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『日本語ぽこりぽこり』(本)

b0189364_20164837.jpg日本語ぽこりぽこり
アーサー・ビナード著
小学館

マルチリンガルの詩人
ならではの視点が面白い


 英語と日本語を駆使する詩人アーサー・ビナードのエッセイ集。タイトルは、所収エッセイ「夜行バスに浮かぶ」で紹介されている夏目漱石の俳句「吹井戸やぽこりぽこりと真桑瓜」から来たもの(だと思う)。
 エッセイはどれも(やや脱力気味ではあるが)ウィットが効いていて面白い。特に日本語に関するものが目を引く。日本語に翻訳された詩の誤訳を指摘したものもなかなかに興味深い。
 また(雑誌の企画のために)日本ならではの「体のための商品」を集めたというエッセイ(「三年前の夏の土用にぼくが死にたくなかったワケ」、初出は『新日本文学』)が実に秀逸。このエッセイ集の中で一番長いものであるため、目玉だったのかも知れない。ABOBAコンドームや陰毛用かつらなどを入手して雑誌社に送ったという内容の話ではあるが、少しとぼけたタッチで書き連ねており、著者のエッセイの特徴がよく発揮された一本と言える。
 著者は日本在住が長いようだが、日本文化を外の目から見るという視点が貫かれていて、その視点は多くのエッセイに反映されている。一方でアメリカに住んでいた頃に経験した話もあり、そのときの経験が日本との比較文化的な視点で記述されたりする。こういった2種類のものが併存しているのはこの著者ならではであり、その部分が一番の魅力と言えるかも知れない。概ねどのエッセイも面白かったが、最後の「オマケのミシシッピ」(著者のミシシッピ川に対する思いを盛り込んだ旅行記、初出は『翼の王国』)は、あまり面白味を感じなかった。しかもかなり長い一編で、この一本のおかげで最後はかなり退屈してしまった。
第21回(2005年) 講談社エッセイ賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ちいさな言葉(本)』
竹林軒出張所『本当はちがうんだ日記(本)』
竹林軒出張所『小説より奇なり(本)』
竹林軒出張所『子どもはみんな問題児。(本)』
竹林軒出張所『かつをぶしの時代なのだ(本)』
竹林軒出張所『さらば東京タワー(本)』

by chikurinken | 2017-06-25 07:15 |
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