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竹林軒出張所

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『祇園 女たちの物語 お茶屋・8代目女将』(ドキュメンタリー)

祇園 女たちの物語 〜お茶屋・8代目女将〜(2017年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

安易に美化することはできないと思う

『祇園 女たちの物語 お茶屋・8代目女将』(ドキュメンタリー)_b0189364_07403180.jpg 京都、祇園のお茶屋の女将の物語。客に最高のサービスを提供することを旨として、これまで女将業を勤めてきた太田紀美さん。しかしすでに77歳で、体も以前のように無理が利かなくなってきた。娘に女将業を譲ることを考えているが、娘は割合ドライに接客を行うために、一抹の不安を抱えているという状況。
 なんでもこのお茶屋には、女将は結婚してはならない、ただし娘を産んで後を継がせなければならないというような(少し無茶な)家訓があるらしい。太田さんはすでに8代目で、彼女も未婚のまま娘を産んだという。世間の一般的な感覚からは大分ずれているように思えるが、それこそが祇園。江戸時代の花街の伝統がそのまま踏襲されていて、それがお客にとって魅力になっているからにはそれを踏襲するのが理想ということらしい。僕にはアナクロのようにも思えるが、本人さんたちがそれで良ければ、他人があれやこれや言うことではない。
 だが祇園には(今はどうかわからないが)旧態依然とした人権感覚がかなり続いていたようで、被害に遭った少女たちも多いと聞く。少なくともあまり美化することはできないんじゃないかと思う。この番組では、日本の伝統の一面としてお茶屋を描いているが、手放しで称賛することは僕にはできない。やはりどこかで、たとえば中国の纏足みたいな一種異様な感じを受けるのだがどうだろうか。番組は若村麻由美がナレーションを担当していて、全体的にジャパネスクな良い雰囲気を醸し出していた。普通に見ている分には、上記のような反感を抱いたりしないだろうが、どこか腑に落ちない自分がいる。一見美しい面だけを取り上げて美化するだけでは、物事の本質は見えてこない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『外国人が見た禁断の京都(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『舞妓の反乱(本) 再録』
竹林軒出張所『祇園・継承のとき 井上八千代から三千子へ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『祇園の子(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『祇園囃子(映画)』
竹林軒出張所『祇園の姉妹(映画)』

by chikurinken | 2017-06-17 07:41 | ドキュメンタリー
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