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竹林軒出張所

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『チャタレイ夫人の恋人(2015年ドラマ版)』(ドラマ)

チャタレイ夫人の恋人(ドラマ版)(2015年・英)
監督:ジェド・マーキュリオ
原作:D・H・ロレンス
出演:ホリデイ・グレインジャー、リチャード・マッデン、ジェームズ・ノートン、ジョディ・カマー

『チャタレイ』映像化の悪い例

『チャタレイ夫人の恋人(2015年ドラマ版)』(ドラマ)_b0189364_19445856.jpg BBCが20年ぶりに製作した『チャタレイ夫人の恋人』。しかし前作と比べると、炭酸が抜けたビールのような、なんとも物足りない中途半端な作になっている。
 まず登場人物が中途半端である。チャタレイ夫人コニーの夫、つまりクリフォードが結構善人で、これだとコニーの行為が正当化できない。ただの裏切り不倫話になってしまい、そのために後味も悪い。しかもコニーの相手の森番、オリバーも、間男のくせしてクリフォードに対してはなはだ身勝手な振る舞いに及ぶ。そのため、この2人に対してまったく共感できない。彼らに対して自分の立ち場がわかっているのかとさえ思う。クリフォードの介護に当たっているボルトン夫人もクリフォードに対して非常に身勝手につらく当たる。こうしてみると、まったくクリフォードが浮かばれない。不倫話なんだから、むしろ背徳感などを入れて、それなりのリアリティを持たせたいところで、ましてや寝取られた方(クリフォード)に救い(あるいは「当然の報い」のような印象)がなければ、話として成立しないんじゃないかと思う。それから、コニーとオリバーが接近するあたりの描写もまたぞんざいで、まったくリアリティが感じられず、男女の機微の面白さがないのも大きなマイナス・ポイントである。恋愛ドラマとしても見るに堪えないレベルである。
 キャストは、オリバー役のリチャード・マッデン、クリフォード役のジェームズ・ノートンとも結構なイケメンで、そのくせコニー役のホリデイ・グレインジャーは野暮ったくてまったく冴えない。こういったキャストを見ると、女性向けに作ったドラマなのかと穿った目で見てしまう。
 『チャタレイ夫人』と言えば「大胆な性描写」が話題になるんだが、そういったシーンもほぼ皆無であった。非常にソフトで、一般映画のちょっとしたラブシーンなみ。これが『チャタレイ』なのかと言いたくなるような代物である。内容も薄っぺらい上、性格描写がデタラメで、明確な主張もなく、このドラマで何が言いたいのかわからないという類の作品である。同じ原作でも作り手によってこんなに変わるものかという思いを新たにした次第である。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『レディ・チャタレー(映画)』
竹林軒出張所『チャタレイ夫人の恋人(映画)』
竹林軒出張所『チャタレイ夫人の恋人(1993年ドラマ版)(ドラマ)』
竹林軒出張所『テス(2008年ドラマ版)(ドラマ)』

by chikurinken | 2017-06-12 06:44 | 映画
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