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竹林軒出張所

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『人類初飛行の光と影』(ドキュメンタリー)

人類初飛行の光と影 〜ライト兄弟とホワイトヘッド〜
(2016年・豪仏独ARTEMIS INTERNATIONAL他)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

ライト兄弟はビル・ゲイツなみ

『人類初飛行の光と影』(ドキュメンタリー)_b0189364_20061824.jpg ライト兄弟が人類史上初めて飛行機を飛ばしたとされるのは1903年。しかし実際は、ドイツ生まれのグスターヴ・ホワイトヘッドという人物が、1901年にアメリカで初飛行を経験していた、しかも何度も数百メートル飛んでいたという事実を紹介するドキュメンタリー。
 発明は一人の天才によっていきなり生み出されるものではなく、同時代のいろいろな技術の集積の結果生まれるということは重々知っており、ライト兄弟以前にも大勢の人間が空を飛んだことも知っているが(竹林軒出張所『発明はいかに始まるか(本)』を参照)、しかしこのホワイトヘッドの件、ことはそれほど単純ではないようだ。このドキュメンタリーによると、すでに実用飛行を成功させたホワイトヘッドのもとをライト兄弟が訪れ、投資を匂わせながらその飛行機の秘密を丹念に調べていったという事実があるらしい。つまり今でいう産業スパイということになる。その後ホワイトヘッドは、資産を差し押さえられたりしたため、飛行実験を続けられなくなったが、一方のライト兄弟は1903年に飛行に成功したと世間に発表する。ただしこの時点では、本当に飛行に成功したか疑わしいというのもこのドキュメンタリーの主張である。ライト兄弟はその後、飛行機の技術に関する特許を取ったため、飛行機が作られるたびに特許料を得られるようになって、富を築いていった。一方のホワイトヘッドは不遇の晩年を送り、初飛行の功績もライト兄弟のものとなった。
『人類初飛行の光と影』(ドキュメンタリー)_b0189364_20101329.jpg こういう事実が最近明るみに出たため、ライト兄弟ではなく、ホワイトヘッドが人類史上初めて飛行機を飛ばしたという事実を認める団体も増えているという。だがスミソニアン博物館は、頑なにこの事実を受け入れようとしない。今でも、最初に飛行に成功したとされるライト兄弟の飛行機(ライト・フライヤー号)が展示されているわけだが、実はこれ、スミソニアン博物館とオーヴィル・ライト(ライト兄弟の弟の方)との間に交わされた契約のためだということがここで明かされる。つまりライト兄弟の子孫がその展示に協力する代わりに、ライト兄弟の初飛行という「事実」を絶対に覆さないという契約があり、それが今も効力をもっているらしいのだ。
 どこまでが真実かにわかに判断できないが、こういういきさつを聞くと、ライト兄弟、まるでビル・ゲイツである。エジソンも似たようなものだったという話を聞くが、要するに要領の良いやつが一番得をするという良い証左なのかも知れない。やはり常識だと思っていることは疑ってかかる必要がある……とあらためて思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『発明はいかに始まるか(本)』
竹林軒出張所『世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史(本)』
竹林軒出張所『電流戦争! エジソンVSテスラ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『大空へ アメリカ自作飛行機物語(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『iPadの衝撃 その1』

by chikurinken | 2017-05-19 07:04 | ドキュメンタリー
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