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竹林軒出張所

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『上意討ち 拝領妻始末』(映画)

上意討ち 拝領妻始末(1967年・東宝、三船プロ)
監督:小林正樹
原作:滝口康彦
脚本:橋本忍
撮影:山田一夫
美術:村木与四郎
音楽:武満徹
出演:三船敏郎、司葉子、仲代達矢、加藤剛、江原達怡、大塚道子、松村達雄、三島雅夫、神山繁、山形勲、市原悦子

b0189364_21012788.jpgリアルだけど……
リアルじゃなかった……


 これも小林正樹作品で、『切腹』と似たようなスタッフ、キャストの映画である。原作まで滝口康彦と共通。撮影監督と美術監督は異なるが、映像はなかなか凝っている。撮影だけ取り上げるならばこちらの方に分があるかも知れない。幾何学を生かしたような非常に凝ったものが随所に現れ、そもそもタイトルバックからして遊びの要素が多く、ここだけでも十分楽しめる。どこか現代美術風の要素が全編に漂うが、決して奇を衒ったものでない。非常に正攻法でもあり、何も考えずに見ていたら気が付かないかも知れない。それほど名前の撮影監督ではないが、素晴らしい映像である。
 ストーリーは、藩主の都合で元側室を結婚相手にあてがわれ、しかもその後、互いに馴染んで子までできたところでまた返せと要求されて、腹に据えかねた武士が藩に対して反旗を翻す……というもの。ただ終わりの方があまりに荒唐無稽になってエンタテインメント的な要素が強くなっていくため、なんだか釈然としない。藩士の仕事や生活が(特に序盤)かなりリアルに描かれているにもかかわらず、ストーリー展開にリアリティがなくなり、見ていてちょっと納得が行かなくなってきたが、どうもこのあたりは原作にない部分で、映画の製作側が改変した結果がこれ、ということのようだ。原作のままだとあまりに地味で、1960年代の映画としては成立しにくいという思いがもしかしたら製作者の側にあったのかも知れない。チャンバラ・シーンがふんだんに出て来て確かにエンタテイメント的には面白くなっているが、何か腑に落ちない部分が最後まで残る。このあたりは『切腹』と比べて少し見劣りする部分である。
 主人公の笹原伊三郎を三船敏郎、その友人でライバルの浅野帯刀を仲代達矢が演じており、『用心棒』『椿三十郎』を思い出させる取り合わせである。ただ三船と仲代、どちらかと言うと互いの役を演じる方がそれぞれの役柄に合っているような気もするが、製作が三船プロということで、こういう風(つまり主人公=三船)になったのかなどと勝手に想像する。他の役者、加藤剛や司葉子、神山繁や山形勲に至るまで非常に適役だったため、2人のずれ具合(?)が特に目に付いた次第。
 演出は正攻法で、最後まで一気呵成になだれ込むようなストーリー展開は見事である。武士世界の不条理をテーマにした作品だが、細かい部分にある程度目をつぶり、エンタテインメント作品として見れば、非常に素晴らしい映画である。申し分はない。言うまでもなく武満徹の音楽も非常に良い。
第28回ヴェネツィア国際映画祭国際映画評論家連盟賞受賞
昭和42年キネマ旬報ベストテン日本映画第1位
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『切腹(映画)』
竹林軒出張所『仲代達矢が語る 日本映画黄金時代(本)』
竹林軒出張所『用心棒(映画)』
竹林軒出張所『椿三十郎(映画)』

by chikurinken | 2017-05-09 07:00 | 映画
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