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竹林軒出張所

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『レ・ミゼラブル』(1)〜(4)(ドラマ)

レ・ミゼラブル (1)〜(4)(2000年・仏)
演出:ジョゼ・ダヤン
原作:ヴィクトル・ユーゴー
脚本:ディディエ・ドゥコワン
撮影:ウィリー・スタッセン
音楽:ジャン=クロード・プティ
出演:ジェラール・ドパルデュー、ジョン・マルコヴィッチ、クリスチャン・クラヴィエ、ヴェロニカ・フェレ、シャルロット・ゲンズブール、ヴィルジニー・ルドワイヤン、エンリコ・ロー・ヴェルソ、ジャンヌ・モロー

『レ・ミゼラブル』のほぼ完璧なドラマ化

b0189364_19100159.jpg ヴィクトル・ユーゴーの『レ・ミゼラブル』を約6時間のドラマにしたもの。『レ・ミゼラブル』は、これまでたびたび映画化やドラマ化、あげくはミュージカル化されているほどの名作だが、このドラマは決定版と言えるほどのできである。原作にもかなり忠実で、主役を演じたジェラール・ドパルデューが「時間の制約から原作の改変・短絡が避けられない映画化に対し、時間をかけて忠実に描写出来る長編ドラマのメリットを認め、プロデューサーも兼任した」(Wikipediaより)という作品である。原作の『レ・ミゼラブル』を堪能するにはこれ以上ないドラマである。
 このドラマ、非常に丁寧に作られている上、しかもキャストが素晴らしい。ジェラール・ドパルデューのジャン・ヴァルジャン、ジョン・マルコヴィッチのジャヴェール、ヴィルジニー・ルドワイヤンのコゼットは秀逸で、これ以外のキャストは考えられないと思わせるほどである。美術や衣装も素晴らしく、原作本を読む代わりに映像を見ることの利点を十分に感じることができる。
 このドラマ、各回1時間半×4回分で構成されているが、第1回は特にフランスの救いようのない下層社会が描かれ、そのひどさは見るに堪えないほどで、おかげで途中何度も中断を余儀なくされた。つまりそれくらいよくできたドラマということを言いたいわけだが、第2回以降も、ジャヴェールに追われるヴァルジャンの構図を中心に、それを取り巻く人々のさまざまな人生模様が絡んでくる。一方でフランス革命や7月革命が背景として描写されるなど、時代とそれに翻弄される人間の描写が素晴らしい。
 序盤は徹底したリアリズムで描かれていくが、真ん中にどっしりと置かれるのは理想主義的人間像で、それをジャン・バルジャンが体現していく。バルジャンとジャヴェールの絡みは、さしずめ性善説的な人間観と性悪説的な人間観のぶつかり合いのようにも見え、善であろうとするバルジャンと、悪の道にどっぷり嵌まり込んだテナルディエの絡みも、性善説と性悪説とのぶつかり合いのように見える。ドラマチックなストーリーでありながら、明解なテーマが随所に顔を覗かせる。見る者を引っ張り込んで離さないストーリー展開はさすがである。ただこのドラマ版、ちょっと偶然に頼りすぎな面があって(原作については詳しくは知らない)、そこら辺がちょっと引っかかるところではある。とは言えこれだけのドラマはちょっとやそっとでは作れないだろうし、優れたフランス文学を映像で堪能できるというのも、このような上質のドラマがあるゆえである。僕自身は、19世紀フランス文学の偉大さに触れたような気がしている。随所で流れるテーマ音楽もロマン派的で良い。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『原作と映画の間』
竹林軒出張所『隣の女(映画)』
竹林軒出張所『カミーユ・クローデル(映画)』

by chikurinken | 2017-04-19 07:09 | ドラマ
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