本日ただいま誕生(1979年・新世映画新社)
監督:降旗康男
原作:小沢道雄
脚本:下飯坂菊馬、千田由治
音楽:八木正生
出演:植木等、宇津宮雅代、川谷拓三、中村敦夫、室田日出男、山口いづみ
日本の映像界には「幻」が多い 小沢道雄という人の同名タイトルの自伝を映画化したもの。この人、曹洞宗の坊さんだが、実は第二次大戦のときに凍傷のため両足切断という憂き目にあった。復員してからも、両足がないことで大変つらい思いもしたが、出家することで自分というものを確立し、新しい生き方を見つける。その波瀾万丈の生き方を映画化したのがこの映画。
実はこの映画、永らく幻の作とされていたらしい。というのは、原版フィルムが残っていなかったためで、それが近年渡辺プロの倉庫で発掘されたという。そもそもこの映画、資金不足で撮影が中断されたが、植木等が事務所社長に懇願して完成した(
『映画.com』より)といういわく付きの作品である。その割にはスタッフもキャストも一流で(しかもクレージーキャッツの面々が友情出演している)、こういう映画をお蔵入り化あるいは幻化させてしまうのが当時の日本映画界のレベルを反映しているとも言える。
映画としては割合よくできていて、後半はやや面白さを欠いてくるが、決して消えて良い作品ではないと思う。ただ前半登場していた重要なキャラクターが後半出てこなくなるみたいな部分があって(資金不足の影響かも知れない)、完成度の低さは若干感じられる。
結局原版フィルムは復元されたらしいが、他にも日本映画(あるいはドラマ)にはこういう埋もれた作品がたくさんあるんだろうなと感じてしまう。なんとか復元していただきたいものだが、こういう仕事は、本来であれば文化庁あたりが取り組むべき事業じゃないんだろうかなどと考えたりする。
★★★参考:
竹林軒出張所『ニッポン無責任時代(映画)』竹林軒出張所『コミック昭和史 第5巻、第6巻、第7巻、第8巻(本)』竹林軒出張所『日本人は何をめざしてきたのか (6)(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『忘れられた皇軍(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『同棲時代(ドラマ)』竹林軒出張所『「快刀乱麻」を聴く』竹林軒出張所『植木等とのぼせもん (1)〜(7)(ドラマ)』