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竹林軒出張所

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『ソビエト連邦のコマーシャル王』(ドキュメンタリー)

ソビエト連邦のコマーシャル王
(2014年・エストニア/フィンランドTraumfabrik)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

広告に政治体制の矛盾が見え隠れする

b0189364_23571884.jpg 旧ソ連に存在していた唯一のCM製作会社、ERF(エストニア広告フィルム)。ソ連のテレビで放送されるCMを一手に引き受け、繁栄を謳歌していた。しかしソ連崩壊とともに事業から撤退。そもそもこの会社、エストニアに存在していたため、バルト三国が旧ソ連と縁を切った時点で、事業が継続できなくなった。ただし彼らが作ったCMフィルムは、アーカイブに収められ今も見ることができる。このドキュメンタリーは、こういったコマーシャル・フィルムを紹介しながら、それを通じ広告からソ連の社会を照射していこうという試みである。
 そもそも、計画経済だったソ連、広告が必要あるのかという疑問が真っ先に生じる。実を言うと広告はまったく必要ないどころか、ソ連は常時商品不足、物資不足が続いていたため、テレビでCMを打ったところで、消費者に商品が手に入るとは限らない。ではなぜCMが存在するかというと、たとえばある国営企業がある商品を作ってはみたが、在庫の山を抱えていて商品を捌けないケース(CMの力でなんとかしてくれということらしい)とか、国営企業が予算を消化できないため予算を消化するためにCMを発注するケース(日本の役所仕事を彷彿させる)とかで、こういう話を聞くと、CMにもソ連型計画経済の矛盾みたいなものが露わになっているのがわかる。
 ただCM自体は、ERFが当時のアメリカやヨーロッパの広告手法を研究していたため、それなりの作品(?)に仕上がっていて、国際映画祭で受賞したCMフィルムもあるほどだ。もちろん今見ると気恥ずかしい演出が多い(これは同時代の日本の広告を見ても感じることだ)のは事実だが、それでも、こういったCMからは共産圏であることがにわかに信じられない。共産圏の臭いがあまりしないのは、広告自体が資本主義的であるせいかわからないが、興味深い映像であることは確かである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『こうしてソ連邦は崩壊した(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『フルシチョフ アメリカを行く(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ベラルーシ自由劇場の闘い(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-03-28 06:56 | ドキュメンタリー
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