世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史
スティーブン・ジョンソン著、大田直子訳
朝日新聞出版
人気コラムニストによる技術革新概論 何かのきっかけで思いもかけない技術が生まれ、それが登場することでまた別の技術の登場が誘発される。こういったことの連鎖が発明を作り出す。したがって発明は、偉大な1人の天才がもたらしたものではありえず、時代背景があって初めて成立するものである。それは
『発明はいかに始まるか』でも繰り返し主張されていたことである。
この本では、「ガラス」、「冷たさ」、「音」、「清潔」、「時間」、「光」などをテーマに、どういった時代背景でどういったきっかけが起こり、それが周りをどう触発していったか、そしてそれがその後の技術革新にどのように影響を与えていったかについて紹介していく。
たとえば「ガラス」の場合、透明ガラスが発明されてからそれが眼鏡を生み出し、そのことが、活版印刷術の発明でもたらされた本の普及に拍車をかけた。また同時にレンズの改良により顕微鏡や望遠鏡が生み出され、それが生物学、医学、天文学、物理学などの発展を促す結果になった……などという一連の流れが紹介されている。実はこれ、以前ここで紹介したドキュメンタリー、
『いまに至る道 ガラス』と内容がほぼ一致している。あちらの番組も、この本の作者、スティーブン・ジョンソンが関わっており、要するにこの本、あのドキュメンタリーの書籍版という立場である。そのためあのドキュメンタリー・シリーズと内容は重複している。僕自身、あのシリーズでは「ガラス」、「冷たさ」、「清潔」、「光」の回を見ているので、この本にあまり目新しさは感じなかったが、内容自体は実のところかなりエキサイティングで、言ってみれば大学教養課程の「技術革新概論」というような内容である。買っても損はない良書だと思う。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『いまに至る道 灯り(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『いまに至る道 ガラス(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『発明はいかに始まるか(本)』竹林軒出張所『人類初飛行の光と影(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『電流戦争! エジソン VS テスラ(ドキュメンタリー)』