ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『黄昏のビギンの物語』(本)

黄昏のビギンの物語
奇跡のジャパニーズ・スタンダードはいかにして生まれたか

佐藤剛著
小学館新書

「黄昏のビギン」にまつわるあれやこれや

b0189364_7501154.jpg 1990年代にちあきなおみが発表した「黄昏のビギン」は、今や日本のスタンダードとして歌い継がれているが、なぜそれが広く歌い継がれるようになったかという視点で、この歌の秘密、ひいては作者の中村八大にアプローチしようという試みの本である。
 「黄昏のビギン」は元々、水原弘のシングルレコード『黒い落葉』のB面に収録された曲で、表舞台では永らく演奏されることがなかったが、1991年にちあきなおみが発表したアルバム『すたんだーど・なんばー』にカバー曲として収録され、その後このちあきなおみ版がCMで流されるに至って広く認知されるようになり、それがさまざまな歌手にカバーされたことから徐々にスタンダード曲として定着し始めた。だが実際は、この曲、日本のスタンダードを作りたいと考えていた中村八大のもっともお気に入りの曲であり、キャバレーなどでも昔から歌い継がれていて、スタンダード曲になる素養は最初からあったというのが著者の主張である。
 内容は雑誌で発表されるような実に軽いものであるが、それなりに面白い話である。もっとも一冊の本にするには中身が少なすぎるためか、中村八大のバックグラウンドなどが非常に細かく記述されていて、むしろこちらがメインになっていると考えることもできる。
 「黄昏のビギン」については、個人的にはやはりちあきなおみのバージョンのできが良かったことと、その後のカバーブームがスタンダード化の原因ではないかと思っている。ちあきなおみ版は、ちあきなおみの歌唱と服部隆之の編曲が抜群で、元歌の魅力を150%アップしていると感じる。その後発表された数々のカバー版も聴いたが、大きく分けて、水原弘風とちあきなおみ風に分かれる。多くはちあきなおみの歌唱に似せたもので、こちらが標準になっていることがわかる。中森明菜、岩崎宏美薬師丸ひろ子由紀さおり小野リサなどがそうで、さだまさし長谷川きよしが水原弘風と言えるんじゃないかなと思う(井上陽水についてはその中間みたいな感じ)。ともかく今カバーCDが非常に多く、過去のいろいろな曲が頻繁にカバーされているという現状があり(『京都慕情』や『夢で逢えたら』もカバーがかなり多い)、それが著者の言う「スタンダード化」に繋がっているというのが僕なりの解釈である。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ちあきなおみ ふたたび』
竹林軒出張所『「ちあきなおみ ふたたび」ふたたび』
竹林軒出張所『それぞれのテーブル』
竹林軒出張所『京都人の密かな愉しみ 夏(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2017-02-20 07:51 |
<< 『世界をつくった6つの革命の物... 『山猫』(映画) >>