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竹林軒出張所

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『若者のすべて』(映画)

若者のすべて(1960年・伊仏)
監督:ルキノ・ヴィスコンティ
原作:ジョヴァンニ・テストーリ
脚本:ルキノ・ヴィスコンティ、スーゾ・チェッキ・ダミーコ、パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ、マッシモ・フランチオーザ、エンリコ・メディオーリ
撮影:ジュゼッペ・ロトゥンノ
音楽:ニーノ・ロータ
出演:アラン・ドロン、アニー・ジラルド、レナート・サルヴァトーリ、クラウディア・カルディナーレ、カティーナ・パクシヌー

人間の性(サガ)が悲しい

『若者のすべて』(映画)_b0189364_1844851.jpg 長男を頼って南イタリアから大都市ミラノへ出てきた母親と4人の息子たちの物語。
 ミラノでは貧しい生活が続くが、やがてそれぞれ都市生活に慣れていって、堅気の職を得る者、プロボクサーになる者など出てくるが、道を踏み外す者が出てきて、それがために家族の試練が続くという、いかにもネオリアリズモ的なストーリー。
 モノクロ映像が非常に美しく、全編重厚な印象で貫かれる格調高い作品である。家族の中に不義理な者が出てくるという普遍性の高いテーマを扱っており、途中見続けるのがつらくなる。こういう点もいかにもネオリアリズモ的ではあるが、しかしこの映画は、イタリア・ネオリアリズモ映画の中でも最高レベルに到達した1本で、映画の魅力が凝縮されていると言ってよい。俳優達も皆魅力的で、どの役者にとっても代表作と言えるのではないか。特にアラン・ドロンとクラウディア・カルディナーレには目を瞠る。
 人間の性(さが)の悲しさにうちひしがれながらも、最後まで目を離すことができない、そういう類の非常に立派な映画である。この映画を見るのは今回で二度目だが(前に見たのは30年ぐらい前)、あらためてこの作品の魅力がわかった。非常に良い映画で、ヴィスコンティの代表作と言って良い。
1960年ヴェネチア国際映画祭審査員特別賞受賞
★★★★

参考:
竹林軒出張所『山猫(映画)』
竹林軒出張所『ルートヴィヒ(映画)』
竹林軒出張所『家族の肖像(映画)』
竹林軒出張所『夏の嵐(映画)』
竹林軒出張所『白夜(映画)』

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 以下、以前のブログで紹介した、同じヴィスコンティ監督のネオリアリズモ映画『郵便配達は二度ベルを鳴らす』のレビュー記事。

(2006年12月7日の記事より)

郵便配達は二度ベルを鳴らす(1942年・伊)
監督:ルキノ・ヴィスコンティ
原作:ジェームズ・M・ケイン
出演:マッシモ・ジロッティ、クララ・カラマーイ、フアン・デ・ランダ、エリオ・マルクッツォ

『若者のすべて』(映画)_b0189364_18442511.jpg 見るのは二度目だが、内容をほとんど憶えていなかった。なにせ前回はヴィスコンティ3本立ての最後の1本だったので、見る前からすでに疲れ果てているという有様だった。
 前回は、遅い展開にいらついたという印象があるのだが、今回はそういうことはあまり感じなかった。前回よりも濃密な印象を受けたためか。以降のヴィスコンティ映画とは少し様相が異なり、どちらかというとネオリアリズモ風である。こういった男女の愛憎劇もなかなか面白い。
 主役の男はなかなか男前だった。さすがはヴィスコンティ。
★★★☆
by chikurinken | 2017-02-17 07:13 | 映画
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