五重搭(1944年・大映)
監督:五所平之助
原作:幸田露伴
脚本:川口松太郎
出演:大矢市次郎、花柳章太郎、森赫子、柳永二郎、逢初夢子
きわめてロマン主義的なストーリー
原作も読んでみようかと思わせる 幸田露伴の
『五重塔』を映画化したもの。公開は太平洋戦争末期の1944年。現在DVD化はされておらず、角川映画(大映は現在角川に所属)が保管する現存フィルムに、東京近代美術館フィルムセンターが所有する映像をつなぎ足したものがこのたびCSで放送された。画像は悪いが、大変珍しいものと言える。
途中映像が抜け落ちていることが考えられる上、1時間程度の映画であるため(元々は中編小説)、ダイジェスト風であることは否めない。それでも原作を割合忠実に映像にしている点は評価できる。
ストーリーはロマン主義的というか理想主義的であるが、映像化はそれなりによくできている。演出は可もなく不可もなくという感じではあるが、こちらもそれなりの手堅い仕事はできている。あるいは五所平之助らしいと言えるかも知れない。原作は文語体であるため、原作を知るためにこの映画を見るというのもありだ。ただしなかなかお目にかかれない映画であるのは、先ほども言った通り。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『五重塔(本)』竹林軒出張所『煙突の見える場所(映画)』竹林軒出張所『マダムと女房(映画)』竹林軒出張所『映画女優(映画)』