青空どろぼう(2010年・東海テレビ)
監督:阿武野勝彦、鈴木祐司
撮影:塩屋久夫
ナレーション:宮本信子
四日市ぜんそくはまだ終わっていない 四大公害の1つ、四日市ぜんそくの当時とその後を追ったドキュメンタリー。
四日市ぜんそく発生当時から市民運動を展開し、機関誌などで一般市民へ状況を報告し続けてきたある運動家、澤井余志郎氏に密着する。今回日本映画専門チャンネルで放送された東海テレビのドキュメンタリーでは、概ね同じ手法を執っていて、何らかの事象に関わる人々に密着することで、その事象自体をあぶり出すのであるが、それはこのドキュメンタリーにも当てはまる。澤井氏を通じて公害被害が見えてくるというしくみである。
ただ僕自身は、四日市ぜんそく公害自体がすでに終わったものと考えていたため、今ことさら取り上げる必要があるのかという疑念を持っていた。ところがこのドキュメンタリーによると、ぜんそく被害が実は現在も進行中で、かつてほどマスコミに取り上げられなくなったために、現状があまりこちらに伝わっていないだけというのが真相のようである。しかも現在では、国が公害病認定を行わなくなっているため、被害者の数はますます明るみに出にくくなった。何のことはない、見えない場所に追いやられただけなのであった。そういう意味では、このドキュメンタリーの持つ役割は非常に大きいと言える。僕自身も目からウロコだった。行政や企業が結託すれば、個人が理不尽な目にあっても、無視されるか消されてそれで終わりという状況がよくわかる。同時に、こういった隠された事象を取り上げて伝えるマスコミ(またはミニコミ)の役割の大きさというのもよくわかるというものである。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『日本人は何をめざしてきたのか (3)(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『長良川ド根性(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『平成ジレンマ(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『死刑弁護人(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『ヤクザと憲法(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『ホームレス理事長(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『ふたりの死刑囚(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『人生フルーツ(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『チョコレートな人々(映画)』竹林軒出張所『さよならテレビ(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『さよならテレビ(本)』竹林軒出張所『誰のための司法か(ドキュメンタリー)』