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竹林軒出張所

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『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』(ドキュメンタリー)

約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯
(2013年・東海テレビ)
製作:阿武野勝彦
演出:齊藤潤一
原作:東海テレビ
脚本:齊藤潤一
出演:仲代達矢、樹木希林、天野鎮雄、山本太郎、寺島しのぶ(ナレーション)

検察と裁判所に正義はないのか

『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』(ドキュメンタリー)_b0189364_1837856.jpg 名張毒ぶどう酒事件をテーマにしたドキュメンタリー・ドラマ。
 1961年、三重県名張市葛尾地区の集会で、住人たちが振る舞われたワインを飲んで中毒を起こし、5人が死んだ。警察は、住人の一人である奥西勝が犯行を自白したとして逮捕した。ただしその後の公判で、この自白には信憑性がないということでいったんは無罪判決が出されたが、控訴審判決で一転、死刑判決が出る。
 この事件については、証拠が十分なく、自白だけが有力な証拠であり、そのため検察の筋書きにはあちこちに破綻がある。そのため、通常であれば無罪と見るのが正しいが、検察の面目や裁判所の都合のためか、度重なる再審請求はことごとく却下され、奥西氏は死刑囚として拘置所内で毎日刑の執行に怯える日々を送っている。
 こういったいきさつをドラマ化したのがこのドキュメンタリーで、これまでの過程が非常にわかりやすく説明される。またなぜ裁判所が再審請求をことごとくはねつけるのかも、裁判官が出世するには過去の裁判結果を踏襲することが必要になるためとわかりやすい説明をしている。それを裏付けるかのように、この事件で再審請求を認めた地裁の裁判官がその後裁判官を辞め、再審請求を却下した裁判官が高等裁判所に栄転しているという事例も紹介している。
 いずれにしても奥西死刑囚、この番組の放送時点で、身体が非常に衰弱している。奥西氏の支援団体は何とか生きているうちに釈放されるよう全力を尽くしている状況である。
 ドラマ部分は、奥西死刑囚に仲代達矢、母に樹木希林という豪華なキャスティング。ドキュメンタリーであるため、わかりやすさ重視のストーリー展開であるが、奥西死刑囚の忸怩たる思いや恐怖感は仲代達矢の演技から伝わってくる。硬派の優れたドラマ、というかドキュメンタリーで、大変好感が持てる、と同時に大いに勉強になる。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『眠る村(映画)』
竹林軒出張所『ふたりの死刑囚(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『正義の行方(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ブレイブ 勇敢なる者(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『死刑弁護人(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『時間が止まった私(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『長良川ド根性(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『青空どろぼう(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『平成ジレンマ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ヤクザと憲法(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ホームレス理事長(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『神宮希林(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『チョコレートな人々(映画)』
竹林軒出張所『さよならテレビ(本)』

by chikurinken | 2017-02-03 06:41 | ドキュメンタリー
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