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竹林軒出張所

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『平成ジレンマ』(ドキュメンタリー)

平成ジレンマ(2010年・東海テレビ)
監督:齊藤潤一
撮影:村田敦崇
ナレーション:中村獅童

戸塚ヨットスクールの今

b0189364_885154.jpg 1980年代に脚光を浴びた戸塚ヨットスクール。体罰も辞さない教育で、不良少年を更正させ不登校児を立ち直らせるという評判が立ち、全国から大勢のスクール生を集めたが、生徒の中に死者と行方不明者(スクールを逃亡しようとしたため)が出たことから、自体は一変する。当初戸塚ヨットスクールに好意的だったマスコミは、こぞって戸塚を叩きまくり、悪の権化のごとく言う。結果的に戸塚校長の責任問題に発展し、あげくに校長やコーチが逮捕されるという事態になった。刑については裁判で争われたが、戸塚校長には結局6年の実刑判決が出た。この事件をきっかけに、日本の教育の現場では体罰が完全に禁止されることになった。
 しかしその戸塚ヨットスクール、実は今でも活動している。このドキュメンタリーでは、現在の戸塚ヨットスクールに密着し、どのような教育が行われているかを間近で捉える。
 現在では、不良少年はあまりいず、ニートや不登校児が生徒の中心である(らしい)。家庭内で暴れたりするため、親が藁にもすがる思いでこのスクールに連れてきたというケースが多いようだ。中には成人のスクール生もいるが、こういったニートの成人については、このスクール以外、現在どこにも対応する機関がないというのが実態らしい。戸塚校長は、彼らは他に行き場(行かせ場)がないからここに連れてくるのだと語る。本来であればもっと年齢が低いときに矯正すべき問題をいつまでも放置するから成長できないまま大人になった人間が多くなるのだというのが校長の持論である。
 戸塚ヨットスクールの過去の映像も紹介されるが、その頃の体罰はそれは凄まじい。しかし戸塚校長はそれはわかった上でやっているのだという。もちろん戸塚ヨットスクールのやり方が正しいとは言えないが、だからと言ってマスコミで言われていた(いる)ように彼らが悪に凝り固まった人間であるようにも見えない。それは、カメラがヨットスクールの内部を照らし出しているせいでもあるだろうが、マスコミが外からいろいろ言っていることが、内情を把握していない非常に身勝手でステレオタイプな見方であることは、このドキュメンタリーを通じて徐々に見えてくる。このあたりはオウム真理教の映画とも共通するが、結構新鮮である。
 現在の戸塚ヨットスクールにもいろいろと問題があり、戸塚校長の言っていることが絶対的に正しいとは思わないが、少なくとも彼の経験から導き出された信条に従って教育を行っていたし今も行っていることはわかる。このドキュメンタリーを見ると、教育のあり方などについても思いを馳せることになる。また一面的で画一的な見方が欺瞞に満ちていることもわかる。いろいろと考えさせられるドキュメンタリーである。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『死刑弁護人(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ヤクザと憲法(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ホームレス理事長(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ふたりの死刑囚(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『長良川ド根性(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『青空どろぼう(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『人生フルーツ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『A(映画)』
竹林軒出張所『A2(映画)』
by chikurinken | 2017-02-01 08:09 | ドキュメンタリー
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