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竹林軒出張所

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『ロボットがもたらす“仕事”の未来』(ドキュメンタリー)

ロボットがもたらす“仕事”の未来(2016年・スウェーデンUR)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

ロボットを取っかかりにして労働問題について考える

b0189364_9403074.jpg ロボットの導入によって、これまで人間が行っていた仕事がなくなっている現状を報告するドキュメンタリー。
 200年前の英国で、労働者たちが、自らの職を奪うものとして機械の打ち壊し運動を行っている(ラッダイト運動)が、ロボットの汎用性は、当時の機械と比べものにならないくらいで、相当量の労働がロボットに置き換えられてしまうと考えられる上、実際この状況は現時点でもかなり進んでいる。ただしそうなると、職にあぶれる人々の規模がかつての状況と違うくらい大きいため、引き起こされる混乱は桁外れになるのではないかという意見がある(この番組で紹介されている)。
 一方で、ロボットの導入により、人間が従来のような単調で面倒な仕事から解放されるというメリットを指摘する識者もいる。さらに、機械やロボットの出現が新しい雇用を生み出すような現状も実際にはある。
 だがしかしやはり短いスパンでは、多くの人々にとって、ロボットは失業をもたらす元凶になる。もちろん、失業してから自ら事業を始め、自ら雇用を生み出すような人々もいる(実際アメリカでは個人事業者の割合が増えているという現実がある)にはいるが、それでも、人々に行き渡るだけの仕事を社会が用意できていないのが現状である。
 そもそもロボットや機械には、それを導入することで、社会的な生産コストを節約できるというメリットがあるはずだ。問題はその節約分のコストを一部の人(ロボットを直接活用するいわば富裕層)が独り占めしている現状であり、そのことが失業問題という形で顕在化しているのが現在の労働問題の実像である。そこで、それをすべての人に均等に割り振るようなシステムが必要ではないかという考え方になる。たとえばベーシック・インカム(すべての市民に一定の給付金を提供するシステム)を導入して、仕事をしなくても生きていけるようなしくみを作るという考え方もある。だがこれにも大きな反対勢力があり、労働問題はなかなか一筋縄にはいかないというのが現状である。
 このドキュメンタリーでは、こういったことについてさまざまな関係者がさまざまな方向から語っていき、それを映像を交えて紹介していく。同時にロボットが現在どの程度の仕事までこなせるようになっているか、近い将来どのような仕事を担えるかまで紹介されていて、大変興味深い内容のドキュメンタリーになっている。ロボットを取っかかりにして労働問題を掘り下げていくというアプローチで、さまざまな視点を垂れ流しのように紹介していくという点で、さながらブレインストーミングのようでもある。労働問題について考えるための材料がいろいろと提供されているため、問題についてじっくり検討していくための恰好の素材になっている。何かを主張するドキュメンタリーも結構だが、こういったドキュメンタリーも味があって良い。それに何より大いに役に立つ。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ロボット革命 人間を超えられるか(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『癒やしロボットで認知症治療(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『貧者の兵器とロボット兵器(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『運命の一手 渡辺竜王 VS 人工知能・ボナンザ(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2017-01-14 09:41 | ドキュメンタリー
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