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竹林軒出張所

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『戦艦武蔵の最期』(ドキュメンタリー)

戦艦武蔵の最期 〜映像解析 知られざる“真実”〜(2016年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

フネのムサシは沈んだのさ

b0189364_2050760.jpg フィリピン、レイテ島沖の海底に沈んでいる戦艦武蔵。太平洋戦争のレイテ島沖海戦で、米航空機の集中砲火を浴びて沈没した大日本帝国海軍が誇った大戦艦である。当時主力艦は空母の時代に移っていたにもかかわらず、大日本帝国の主力は依然として大和や武蔵に代表される大戦艦であり、どちらも最後はなすすべなく華々しく散っていったのは歴史が語る通りである。
 さてその武蔵だが、先年、アメリカのプロジェクトチームが、海底に眠る武蔵の映像を捉えることに成功した。マイクロソフトの創立メンバーの1人であるポール・アレンが中心となったチームなんだが、NHKがそこから未公開の映像を(いくらはたいたか知らんが)入手して、それを元に武蔵がどのような過程で沈んでいったか明らかにしようというのがこのドキュメンタリーである。
 武蔵は、中心部が分厚い鉄の装甲で覆われており、製作者側はどのような攻撃に遭っても絶対に沈まないとうそぶいていたらしい。しかし実際は、航空機の魚雷攻撃に遭って、装甲を留めていたリベットが破損したせいで艦内に水が入り沈没することになった。そういう過程が、今回の調査チーム(ちょっと怪しげなチームだが)の推論によって見えてきた。また、艦橋が爆発した形跡もあり、航空機からの攻撃で艦橋が爆発したということも判明した。これは数々の元乗員の証言とも一致する。さらに、砲塔が丸ごと吹き飛んでいることが、残骸の映像からわかるため、沈没後に砲塔下にある大量の弾丸(実践ではほとんど使うことがなかった)が大爆発を起こし、それで船体がバラバラになったのではないかという結論を調査チームは出していた。
 こういうさまざまな仮説を基にして、武蔵が攻撃に遭い沈むまでの様子がCGで再現されるが、これがこの番組のハイライトである。もっともこのCG映像には犠牲になった乗員らはほとんど描かれていないため、リアルさも中位ではある。まあその点は致し方ない。だが乗員の被害については、元乗員のインタビューによって明らかにされ、被害のひどさはそこから窺われるようになっている。甲板上に犠牲者が山のようになっていたという体験談は非常にリアルで、CGを補うに十分な証言である。攻撃に参加したアメリカ人の証言もあり、武蔵の最期を多角的に知ることができる。総じてNHKの取材力が光るドキュメンタリーに仕上がっている。ただし武蔵の最期を知ったからと言って、正直僕にとって何かが変わるなどというものではない。このテーマ自体、(おそらく)高い費用を使ってドキュメンタリーに仕上げる必要があったのか、少々疑問に感じる部分もある。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『野火(映画)』
竹林軒出張所『俘虜記(本)』
by chikurinken | 2017-01-11 07:49 | ドキュメンタリー
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