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竹林軒出張所

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『吾輩はガイジンである。 ジブリを世界に売った男』(本)

吾輩はガイジンである。 ジブリを世界に売った男
スティーブン・アルパート著、桜内篤子訳
岩波書店

第三者的な目で見たアニメの国際市場

b0189364_8453927.jpg ジブリ作品の海外への輸出を担当したアメリカ人の体験記。
 著者は、ディズニー・ジャパンやスタジオジブリに在籍し、『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』などをアメリカをはじめとする諸外国に輸出する仕事に携わった人だが、本書ではその辺の経験談が披露されている。たとえばアメリカ向けの吹き替え版作成の際に勝手に音やセリフを追加されたりして(契約で手を加えないことを明記していたにもかかわらず)それを直させたりとか、宮崎駿がプロモーション活動で海外に行くのを非常に嫌がるとか(本書を読むとそれも無理もないことだと思う)、あまり知られていないエンタテインメントビジネスの内側の世界を垣間見ることができる。
 ジブリの宮崎駿や鈴木敏夫、徳間書店の徳間康快、あるいはウォルト・ディズニー・カンパニー関係者の人物評も面白い。日本とアメリカの交渉術や仕事の仕方の違いも率直かつ第三者的な目で書かれており、共感できる。著者の視点が、客観的というか野次馬的であるため、読む側の視点に近いことも共感できる理由である。
 著者がジブリの代表として出席したベルリン映画祭やアカデミー賞授賞式についても同じような野次馬的な視点が貫かれているため、部外者の我々でも共感しやすいし、覗き見的な興味も湧く。
 少し惜しいのは、ところどころ文章が抜けているように感じる部分が、特に序盤多かったことである。原文のせいか翻訳のせいかわからないが、そういった部分が読みづらさに繋がっていたのが残念。とは言うものの、興味深い話が最後まで持続的に展開されるため、十分に楽しめる本であるのは間違いない。タイトルは少々安直に過ぎる(同じタイトルの本が他にもあるし)。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『「ニッポン社会」入門―英国人記者の抱腹レポート(本)』
竹林軒出張所『英国一家、日本を食べる(本)』
by chikurinken | 2017-01-07 08:45 |
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