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竹林軒出張所

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『この世でいちばん大事な「カネ」の話』(本)

この世でいちばん大事な「カネ」の話
西原理恵子著
角川文庫

金について忌憚なく本音で語る良書

b0189364_1915681.jpg マンガ家の西原理恵子が、(ジョン・レノンの「イマジン」のように)子どもたちに語るような口調でカネのあれこれについて語る本。
 全5章構成で、第1章「どん底で息をし、どん底で眠っていた。「カネ」がないって、つまりはそういうことだった。」、第2章「自分で「カネ」を稼ぐということは、自由を手に入れるということだった。」、第3章「ギャンブル、為替、そして借金。「カネ」を失うことで見えてくるもの。」、第4章「自分探しの迷路は、「カネ」という視点を持てばぶっちぎれる。」、第5章「外に出て行くこと。「カネ」の向こう側へ行こうとすること。」という編成である。タイトルが内容を見事に反映しているため、内容が分かりやすいと言えば分かりやすい。
 第1章では「カネ」がないことが暴力や荒んだ生活を生み出すということを、幼児期のどん底生活を紹介しながら説いていく。これは経験を基にしているだけに非常に説得力がある。確かに著者の言う通り、金はそれなりにあればさして意識することはないが、一端なくなるとその大切さは身にしみるし、心が著しく荒んでしまう。僕自身の子ども時代も貧しい時代だったし家も貧しかったんで、共感できる。この第1章は、この本の中でも出色の部分と言える。
 第2章では、ひどく貧しい環境から抜け出て自分で金を稼ぐようになった頃の話。金が手元にあることで自由が手に入ったという感覚も自身が感じたものと共通するんで、このあたりも共感できる。その後のギャンブルの章については、面白くはあるが共感はしない。金のありがたみを知っている人間は普通ギャンブルに手を染めないと思うが、著者によると、失った金額が大きい人間はギャンブルで一挙に挽回しようとするらしい。著者自身もギャンブルで大金を失うような生活をしていたというんで、そのあたりはあまり理解できない。だがギャンブルが本人や家族を不幸にすることは、自身の経験を交えて語っており、ギャンブルに免疫のない若者たちには是非読ませたい内容だとは思う。
 第4章、第5章は、自分の手で稼ぎ、自分の足で外の世界に出ていくことを勧めており、このあたりも若者に読ませたいと思う内容である。金の話となると、自分も含めて卑しいことのように考える傾向があるが、しかし実際には今の社会ではきわめて大事なもので、自分の寄って立つ基盤でもある。著者の主張通り、本音で語ることがもっとも大切な部分である。また、若い世代に伝えるべき事柄で、本来であれば、大人が自身の経験に基づいて子どもに語ってあげなければならないことである。それができないと、負の連鎖が次世代に伝わる、あるいは若い世代が暗黒世界に陥ってしまうことになりかねない。そういう意味でも、その役割を負っている本書は、非常に価値が高い。是非若い世代に読んでほしい本である。マジで、自分の子どもにも読ませたいと思う。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『実録! あるこーる白書(本)』
by chikurinken | 2017-01-06 08:21 |
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