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竹林軒出張所

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『腸内細菌が家出する日』(本)

腸内細菌が家出する日
藤田紘一郎著
三五館

寄生虫から腸内細菌、ひいては抗生物質の害まで
腸内フローラの入門書としては良さそう


b0189364_19432525.jpg 人間の内臓の中に棲んでいる微生物に関するあれこれを雑学的に書き綴った本。また筆者の専門の寄生虫についても紹介されている。
 人間の腸管の中には、3万種類、1000兆個もの細菌が棲んでいて、こういった生物によってヒトは大いに恩恵を受けている。ただし食生活の乱れや抗生物質などによってこのような微生物の構成が変わり、それが宿主であるヒトの健康面にさまざまな害を及ぼしているという。このあたりの主張は、『失われてゆく、我々の内なる細菌』と同じ。おそらく情報の出所はそこではないかと思われるほど、記述内容は似ている。他にも『あなたの中のミクロの世界 (1)』で紹介されていたトキソプラズマの寄宿主に対する作用も書かれていたし、『あなたの中のミクロの世界 (2)』で紹介された腸内細菌と免疫病との関連についても書かれている。かなりいろいろな所から情報を集めてきて、分かりやすくまとめたという種類の本である。
 記述は読みやすく、新しい知見も紹介されているが、中には真偽が定かでないようなものもあって、しかもそれが断定的に書かれていたりしているため、話半分で読む必要がある。あくまでも一般の素人向けの本というスタンスで、そのためもあり細かいことにあまりこだわらず、それぞれの実験結果についてもあまり検証することもなく載せたのだろう。この辺は『失われてゆく、我々の内なる細菌』と正反対のアプローチである。あげくに玉ねぎの酢漬けが腸内細菌に良いという記述まで出てきて(しかもその作り方まで紹介されている)、確かにそうかも知れないが、そこまで話を広げる必要があるのか疑問に感じた。
 腸内細菌についてのさまざまな知見が簡単にまとめられている点は評価したいが、先ほども言ったように真偽が定かでないような知見もあり、しかもそれがさも事実であるかのように書かれているのが少々引っかかる。
 この本で一番興味深かったのは、第2章の「宿主をコントロールする寄生生物」で、著者の専門的な知識が披露されると俄然興味が惹かれるようになる。やはり著者の専門分野を前面に出していただく方が読む方としてはありがたい(腸内の微生物も著者の専門と言えば言えなくはないし、それなりに説得力はあるが)。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『腸内フローラ 医者いらずの驚異の力(本)』
竹林軒出張所『血液型の科学(本)』
竹林軒出張所『あなたの中のミクロの世界 (1)(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『あなたの中のミクロの世界 (2)(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『腸内フローラ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『わたしたちの体は寄生虫を欲している(本)』
竹林軒出張所『失われてゆく、我々の内なる細菌(本)』
by chikurinken | 2017-01-03 07:42 |
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