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竹林軒出張所

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『日曜劇場 りんりんと』(ドラマ)

日曜劇場 りんりんと(1974年・北海道放送)
演出:守分寿男
脚本:倉本聰
音楽:冨田勲
出演:田中絹代、渡瀬恒彦、原知佐子、黒木進、大滝秀治

b0189364_847113.jpg現代版楢山節考

 倉本聰脚本、北海道放送製作の日曜劇場。
 東京で同居していた(と思われる)老いた母(田中絹代)をフェリーで北海道の老人ホームに送り届ける息子(渡瀬恒彦)の話。母は、少しばかり認知症の症状も出ているようだが、基本的にこの息子、およびその兄弟姉妹は母を老人ホームに入れることには反対で、ずっと同居したいと思っている。ただ母の方が自ら知り合いの老人ホームへの入居を勝手に決めたため、しようがなく母を送ることになったという設定である。
 こういうストーリーから容易に『楢山節考』との類似点が思い付くが、テーマもほぼ一緒で、年老いた親を持つ身としてはものすごく身につまされる。
 この作品を書いた頃は倉本聰自身も若く、主人公の方に近いし、また母親に対して似たような経験を持っているという話なので、あくまでも親を送る側の視点だが、老いに対して非常に厳しい見方をしていると言える。たとえば母親が息子に「私が生きていて良いの?」などとサラリと言うセリフなど、これはやはり子供側の視点としか思えない。子供側にとっては、言われると恐ろしいリアリティのあるセリフかも知れないが、老人側にとっては、思考がそういう方向に行くことは(自分自身が年を取ってきた今となっては)あり得ないように思える。このあたりは山田太一が書いた「老い」三部作(竹林軒出張所『冬構え(ドラマ)』を参照)と同様、老いに対して見方がシビアすぎるように感じる。まだまだ自らの老いを現実的に捉えていない者の見方であるように思う。もちろんだからと言って作品の価値を損なうことはなく、特に送る側のいろいろな思いが濃密に表現されていて、そのあたりは共感できる部分である。このドラマも佳作と言って良い。
 音楽は冨田勲で、『田園交響楽』と同じく、『惑星』風のシンセサイザーを駆使していて、効果を上げている。序盤のシーンは、セリフもなく周囲の雑音だけが流れる(少々うるさく感じるが)というなかなか斬新な音使いも見られる。小野武彦が黒木進という役で登場しているのも別の見所かな(細かったため、気が付かなかったけど)。なおタイトルの「りんりんと」は、三好達治の「乳母車」という詩の一節「轔々と私の乳母車を押せ」から取ったもの(ドラマの冒頭で紹介される)。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『冬構え(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 田園交響楽(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ああ!新世界(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ひとり(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 幻の町(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ばんえい(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 風船のあがる時(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 遠い絵本 第一部、第二部(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 時計(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 聖夜(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 うちのホンカン(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 遅れてきたサンタ(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 スパイスの秋(ドラマ)』
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』
竹林軒出張所『100年インタビュー 倉本聰(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2016-12-23 08:47 | ドラマ
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