捨てられる養子たち(2016年・仏BABEL DOC production)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー
犬や猫じゃあるまいし
アメリカで普及している里親制度の実態。
アメリカでは里親制度が充実していて、身寄りのない子どもたちが里親たちに引き取られている。もちろんこういう制度には良い面もあるが(実際そういうケースを耳にしたことがある)、一方で子どもをペットのように売買するような実態がある。このドキュメンタリーでも紹介されていたが、里親に引き取ってもらおうと懸命にアピールする子どもたちの様子は痛ましい。里親の方も可愛い子どもを欲しがっていたりして、子どもが意に沿わないと売りに出し新たな里親を求めるみたいなことも行われている。そこには金銭のやりとりがあるわけで、しかもインターネット上で行われていたりして、オークションのペット市場みたいな趣すらある。
子どもが何とか無事に里親に引き取られた場合でも、中には子どもに対して性的虐待を行う(あるいはその目的で子どもを引き取る)ろくでなしまでいるわけで、里親制度を手放しで称揚するわけには行かないことがわかる。このドキュメンタリーでは、里親制度の問題性をひたすら追求していて、見ている方もそれに疑問を感じるが、一方でうまく行ったケースも紹介されている。うまく行ったというより、理解のある里親が、性的虐待の里親から子どもを救い出して自分の養子にしたというケースで、ちょっと特殊ではあるが、里親制度を一方的に悪く捉えるのは必ずしも適切ではないことがわかる。だが少なくとも何らかの対策が必要なのは明らかで、そのあたりがこのドキュメンタリーの主張である。いずれにしても病んでいるアメリカ社会の実態をうまく伝えていると感じた。
★★★☆
参考:
竹林軒出張所『良心をもたない人たち(本)』