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竹林軒出張所

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『未解決事件File. 05 ロッキード事件』(ドキュメンタリー)

未解決事件File. 05 ロッキード事件(2016年・NHK)
第1部 実録ドラマ 前編
第2部 実録ドラマ 後編

第3部 日米の巨大な闇 40年目のスクープ
NHK総合 NHKスペシャル

戦後最大の疑獄事件に挑む

『未解決事件File. 05 ロッキード事件』(ドキュメンタリー)_b0189364_2375746.jpg NHKの『未解決事件』シリーズ第5作はロッキード事件を扱う。このドキュメンタリー、元々7月に放送されたもので、今回「芸術祭参加」決定にちなんで再放送された模様。3部構成のドキュメンタリーで、全編あわせると3時間半近くに及ぶ大作である。
 第1部と第2部は実録ドラマで、検察の視点から当時の様子を再現する。実録ドラマの内容は次のようなものである。
 1976年、アメリカの公聴会におけるロッキード社幹部の供述から、ロッキード社が日本を含む多くの国の政治家に贈賄したという事実が発覚する。これに伴って検察庁の特捜部が捜査を始める。やがてロッキードの資金が、丸紅、全日空、児玉誉士夫の3つのルートから日本の政府高官に流れていることが判明。ロッキード社側が、航空機トライスターの全日空への売り込みと対潜哨戒機P3Cの防衛庁への売り込みを目論んでいたということもわかる。丸紅、全日空のルートは、米国司法省の協力もあり徐々に明るみに出て、国会での証人喚問、関係者の逮捕に至るが、児玉誉士夫に流れたとされる21億円の行方については依然としてわからない。児玉誉士夫は、戦争時から軍部に食い込み、戦後も裏社会を牛耳っていたと言われるフィクサーだが、当時脳卒中の影響で自宅療養中。検察庁による聴き取りも自宅で行うことになったが、核心部分については一切明かされない。児玉ルートが解明されないまま、最終的に、丸紅ルートから流れた5億円の賄賂を前首相、田中角栄が受け取ったということで、田中角栄の立件、有罪判決でロッキード事件はひとまずの幕を降ろすが、児玉ルートについては最後までわからず、防衛庁による対潜哨戒機P3Cの導入決定(当時日本で進められていた対潜哨戒機国産化計画はこれに伴い反故にされた)までのいきさつは解明されなかった……というのがドラマ部分のストーリーである。あちこちにドラマ的な脚色はあるが、概ね実話に則っている。
『未解決事件File. 05 ロッキード事件』(ドキュメンタリー)_b0189364_2381578.jpg 第3部では、これについて、明るみに出た新資料や当事者へのインタビューなどを通じ、真相を解明していこうとする。結局のところ、日米の防衛関係者が、当時増えていたソビエトの原子力潜水艦に対抗するために対潜哨戒機を日本に導入しようとし、そこにロッキード社や児玉誉士夫が絡んでいたということのようで、対潜哨戒機の国産化では時間と費用がかかりすぎてこれに対応できないという判断があったようなのだ。このような工作が明るみに出ることで日米軍事同盟に多大な悪影響が出ることを懸念した関係者が、最終的に前首相の逮捕という筋書きで落着させたというのが、このドキュメンタリーで解明されたストーリーである。
 ロッキード事件発生当時、僕はまだ子どもだったため、ニュースで報道される内容を包括的に捉えることができなかったが、それでもP3C、児玉誉士夫とか小佐野賢治、丸紅ルート、トライスターなど、いろいろな用語は耳から入っていた。それがこのドキュメンタリーで有機的に繋がって、しかもドラマ仕立てで見せてもらったため、しっかりと把握できた。また、真相がわからないままではあっても、ある程度まで事実を解明できたことは大きな成果であると言ってよい。長いドキュメンタリーであったが、そういう意味でも大きな価値のある有意義な番組であったと言える。またドラマに出てくる役者たちもよかった(田中角栄の石橋凌、児玉誉士夫の苅谷俊介は秀逸)。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『不毛地帯(映画)』
竹林軒出張所『未解決事件File. 02 オウム真理教(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『未解決事件File. 07 警察庁長官狙撃事件(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2016-11-08 07:07 | ドキュメンタリー
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