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竹林軒出張所

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『武器ではなく命の水を』(ドキュメンタリー)

武器ではなく命の水を 〜医師・中村哲とアフガニスタン〜(2016年・NHK)
NHK-ETV ETV特集

人間と生活を再生するための苦闘の歴史

b0189364_8401646.jpgアフガニスタンで活動する医師、中村哲のこれまでの活動を振り返るドキュメンタリー。
 中村哲氏は、1991年にパキスタンからアフガニスタンに入り医療活動を行ってきたが、子どもたちの病気の原因が水不足にあることを悟り、現地で井戸を掘る活動をする。その後、平和のためには住民が食べていけるようにすることが必要であると考え、干ばつで乾燥したかつての農作地帯に川(クナール川)から水を引くことを決意。灌漑の知識などまったくなかったにもかかわらず、用水路を引く工事の指揮を執り、現地の人々の協力の下、数年かけて用水路を完成させる。この用水路のおかげでそれまで干上がっていた周辺地域に緑が蘇り、米や麦などの農業生産物が取れるようになる。その後用水路はさらに伸び、豊かな大地も拡大していった。しかも中村氏はその後、モスクや学校まで作り上げる活動までやっており、アフガン社会の復興に大きく寄与したのだった。
 アフガニスタンはいまだにタリバンやISの脅威にさらされているが、この地域に限っては、そういった勢力に縁がないと中村氏は言う。それは産業がしっかりと育っており、反政府勢力に加担する人々が生み出されないためである。暴力的な勢力を生み出すのは貧困こそが原因であるというのが彼の意見である。
 中村氏の哲学も興味深いところだが、素人でありながら、さまざまな苦難に屈せず用水路(マルワリード用水路)を何とか作り上げ、不毛の大地を蘇らせた過程が、まるで小説や映画のようで非常に面白い。こういった素材が実写映像で紹介されていき、当時の迫力や切迫感までが見ているこちら側に伝わってくる。さながら劇映画を見ているかのようである。こういった映像はぜひアーカイブとして残してほしい……そういった貴重なドキュメントである。
 同時にアフガニスタンだけでなく、戦火にさらされた人々の再生の道筋までが見えてくるようで、非常に頼もしい思いもする。中村哲氏と彼のペシャワール会についてはある程度知っていたが(ただのボランティア団体程度にしか思っていなかったが)、このドキュメンタリーで非常に興味が湧いた。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『アフガン秘宝の半世紀(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『バーミヤンの少年(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『タリバンに売られた娘(ドキュメンタリー)』
竹林軒『圧倒的な迫力、アフガン版ネオリアリズモ』
竹林軒出張所『祖国に幸せを(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『わたしが明日殺されたら(本)』
by chikurinken | 2016-11-06 08:40 | ドキュメンタリー
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