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竹林軒出張所

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『アフガン秘宝の半世紀』(ドキュメンタリー)

アフガン秘宝の半世紀(2016年・NHK)
前編 バーミヤン それは大仏爆破からはじまった!
後編 メスアイナク 危機に直面するシルクロード遺跡
NHK-BS1 NHKドキュメンタリー

アフガンはいまだ混迷状態

b0189364_22433764.jpg アフガニスタンのバーミヤン石窟群は世界遺産に認定されているが、その目玉である巨大石仏は、2001年に当時の政権であるタリバンによって爆破された。バーミヤンは、東西の文化が出会う場所で、各地の影響を受けた美術が点在しており、文化史的にも非常に貴重な遺跡群である。現在同地に住む多くの人々はイスラム教徒であるが、バーミアンの仏教遺跡も地元の宝として大切にしてきた。そういう状況を一変させたのがイスラム原理主義者のタリバンで、彼らはバーミヤン以外にも、カーブル国立博物館に収蔵されていた仏教美術もことごとく破壊してきた。
 このような状況に心を痛めた平山郁夫らのグループが、(盗掘などにより最終的に)海外に流出したアフガニスタンの美術品を買い集め、「文化難民」として保護する活動を行ってきた。タリバン政権が崩壊した後、こういった美術品はアフガニスタンに返還されたが、先日東京国立博物館の展覧会でも展示された。こういったいきさつを紹介するのがこのドキュメンタリーの前半部分。
 後半は打って変わって現在のアフガンの遺跡の状況である。首都のカーブル近郊にメスアイナクという遺跡がある。この地には未発掘の遺跡がまだ多数残っていて、しかもその量といい質といい相当なものであるらしい。ところがこの地で産出する銅を目当てに中国の企業が進出してきて、2年後に鉱山開発を開始することになった。アフガン当局としては、鉱山開発が始まる前に遺跡を発掘しておこうということで、世界の関係者を呼んで遺跡発掘作業を急ピッチで進めることにした。予想どおり次々に新しい遺跡が発掘されたが、2年という期間はあまりに短く、関係者たちも鉱山開発を延期するよう申し出るなどやや混乱が生じる状況になった。
 この状況を大きく変えたのが、再び登場したイスラム原理主義者である。イスラム原理主義者の活動がここのところ頻繁になり、この地に再び内戦の危機が迫ってきた。発掘に携わっていた関係者は国外退去を余儀なくされる。しかしそれは中国企業の関係者も同様。そういうわけで銅山開発は現在暗礁に乗り上げて停止中である。もっともそれは発掘作業についても当てはまるし、イスラム原理主義者が再びこの地を支配すると遺跡が破壊される可能性も出てくるわけで、予断が許されない状況であることは変わりない。
 混迷のアフガニスタン情勢を美術を通じて伝えるという試みのドキュメンタリーで、どうしようもない状況が十分伝わってきて、やるせなさだけが残った。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『バーミヤンの少年(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『武器ではなく命の水を(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『タリバンに売られた娘(ドキュメンタリー)』
竹林軒『圧倒的な迫力、アフガン版ネオリアリズモ』
竹林軒出張所『祖国に幸せを(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『わたしが明日殺されたら(本)』
竹林軒出張所『貧者の兵器とロボット兵器(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2016-10-13 06:43 | ドキュメンタリー
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