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竹林軒出張所

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『魂に響くピアノを』(ドキュメンタリー)

魂に響くピアノを 中村紘子さんの残したもの(2016年・NHK)
NHK-Eテレ

b0189364_2248138.jpg地味な追悼番組だが
故人の人柄は見えてきた


 先頃亡くなったピアニスト、中村紘子の追悼番組。ドキュメンタリータッチだが、半分ぐらいは演奏会のシーンである。
 1944年に生まれた中村紘子、戦後斎藤秀雄の弟子になってピアノ奏法を学んだ。なんと小澤征爾も同期だという(中村は小澤のことを「小澤君」と呼んでいたらしい)。その後、音楽コンクールに次々に入選するなどして、ピアニストとして名前が知られてくる。また、NHK交響楽団の海外ツアーにソリストとして参加するなどして、それなりの評価を受けることになる。
 プロになった後ジュリアード音楽院に留学したりもしたが、日本式の激しくタッチするピアノ奏法を批判され、カルチャーショックに陥ったという話も紹介され、なかなか新鮮。
 僕自身は中村紘子については、ピアノ奏者としてというよりもカレーのCMなどTVで目にする人という印象で、彼女の音楽自体にはあまり関心はなかった。だが1989年に発表されたエッセイ、『チャイコフスキーコンクール』を読んで中村に対する印象が大きく変わり、なんちゅう面白い文章を書く人だと感心した記憶がある。続編の『ピアニストという蛮族がいる』も買って読んだが、こちらも非常に面白かった。そう言えばどちらかのエッセイに、日本独自の指を立てて弾くピアノ奏法についての記述があったような気がする。ただし中村紘子自身の話ではなく、戦前(明治期だったような……)のピアニストの話だったような記憶があるが、定かではない。
 番組では最後に、中村紘子によるチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番のフル演奏が流される。ただしどちらかというと、途中流されたNHK教育の講座番組『ピアノとともに』の方が興味深かった。この中で生徒にピアノのテクニックを教えるんだが、方法を押し付けるのではなく私の意見と断った上で奏法を紹介する方法論が、斬新で見ていて気分が良かった。中村紘子の人柄を示しているようなシーンであった。また『チャイコフスキーコンクール』読んでみようかな……などという気分になった。
★★★

参考:
竹林軒出張所『バイオリンの聖地クレモナへ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『もうひとつのショパンコンクール(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2016-08-30 06:48 | ドキュメンタリー
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