ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『明治開化 安吾捕物帖』(本)

b0189364_13563671.jpg明治開化 安吾捕物帖
坂口安吾著
角川文庫

『快刀乱麻』の原作

 あの坂口安吾がミステリーを書いていたというのも意外な話。しかも舞台が明治時代と来ているからミステリーとしても異色中の異色である。
 『明治開化 安吾捕物帖』は、坂口安吾が昭和25年から2年間『小説新潮』に全23回に渡って連載した短編小説集で(本書解説より)、そのうちの半分が本書に、残りの半分が『続 明治開化 安吾捕物帖』に収録されている。それぞれの話は非常によく練り込まれていて、その中で明治日本の下層社会、上流社会のおどろおどろしい人間模様が繰り広げられる。不気味さを感じるような話もあり、個人的にはあまり趣味ではない。横溝正史みたいな世界と言ったら良いか……。ただし横溝正史のおどろおどろしい諸作とこの『安吾捕物帖』のどちらがオリジナルであるかは定かではない(『八つ墓村』は昭和24〜26年発表、『犬神家の一族』は昭和25〜26年発表)。
 登場人物は名探偵の結城新十郎をはじめとしてユニークな面々が登場するが、なんと言っても毎回推理を外す勝海舟が出色。それぞれの話は、概ね同じパターンで進んでいく。言ってみればテレビドラマみたいな構成である。そのせいかかつて70年代に『快刀乱麻』というタイトルで朝日放送によってドラマ化されていた(竹林軒出張所『内田喜郎と快刀乱麻』を参照)。今回原作を読んでわかったが、結城新十郎のイメージがドラマとかなり異なっていて、ドラマでは侠客のようだったが原作ではむしろ洋行帰りのハイカラ青年というイメージである。登場人物の花逎家因果(植木等)や泉山虎之介(花紀京)も僕がドラマを見たときに持っていたイメージとこの原作では少し印象が違っていて、勝海舟以外は原作とドラマの間であまり接点がないという印象である。ストーリーや設定のみを原作から拝借したというドラマだったのだろう。しかしそれでも十分面白いドラマだったことは間違いない。それはこの原作本もしかりである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『内田喜郎と快刀乱麻』
竹林軒出張所『「快刀乱麻」を聴く』
by chikurinken | 2016-08-28 13:56 |
<< 『魂に響くピアノを』(ドキュメ... 『映像の世紀プレミアム 第2集... >>