映像の世紀プレミアム 第2集 戦争 科学者たちの罪と勇気
(2016年・NHK)
NHK-BSプレミアム
歴史と科学者 『映像の世紀』スピンオフの第2弾。この第2集では、核に支配された恐怖の20世紀を生み出した科学者たちの功罪を映像で取り上げる。化学兵器の父フリッツ・ハーバー、原子爆弾の製造をルーズベルトに進言したアインシュタイン、実際に原爆を作り出したオッペンハイマー、大陸間弾道ミサイルを作り出したフォン・ブラウンらが俎上に上がる。
フリッツ・ハーバーはユダヤ人であったが彼の化学兵器は、その後ナチスによるユダヤ人虐殺に利用された。またアインシュタインやオッペンハイマーは核兵器に関わった後反核に転じ、オッペンハイマーは晩年に至るまでFBIの監視下に置かれるなど、彼らの皮肉な人生も取り上げられる。元々科学者たちが発見し利用した技術が、悪意のある人々によって大量破壊兵器に転用されたという点でどれも共通しているが、そもそも科学者たちの無邪気さ、先見性のなさが問題になるわけだ。もっとも中には、フォン・ブラウンのように一切悪びれない者もいる。戦争中はナチスのために弾道弾を作り、戦後はアメリカに渡って大陸間弾道ミサイルを作って、やがてはアポロ計画に参加して月ロケットを作る。こうして彼は栄光を勝ち取ったが、かつての黒い経歴は彼にとっては成功のためのステップでしかなかったようだ。
こういった人々のせいで、その後科学者の倫理が問われるようになったわけだが、残念ながらいまだに科学者の未熟さというか素朴さはあまり改善されていないようで、いまだに勝手な思い込みで人々に災厄をもたらしている。少なくとも彼らの仕事に対して一方的に称賛するのではなく、批判的な目を向けたいものである。ノーベル賞がそんなにエラいのかよく考えたいものだ。
その他にも、飛行機の発展を含む、第一次大戦での武器の進歩についても言及される。これは
『映像の世紀 第2集』で取り上げられたもので、『映像の世紀』シリーズの目玉と言ってよいテーマである。
テクノロジーを全面的に礼賛するのではなく、その影響も鑑みなければならんよとする、このドキュメンタリーのメッセージは十分に伝わってきた。その点は評価に値するが、やはりほとんどが使い回しの映像で、今さら感が強いのもまた事実である。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 1(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 4(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 7(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 8(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 12(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 13(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 14(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 15(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 16(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 17(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 18(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 20(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 21(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『映像の世紀 第1集〜第4集(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『新・映像の世紀 第1集(ドキュメンタリー)』