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竹林軒出張所

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『へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々』(本)

へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々
鹿子裕文著
ナナロク社

ユニークな老人介護施設とユニークな人々

b0189364_21241337.jpg 福岡市にあるユニークな老人介護施設「宅老所よりあい」の設立のいきさつと、それに関わるユニークな介護者たちの人間模様が描かれる本。語り部は「よりあい」で雑誌『ヨレヨレ』をつくっている編集者、鹿子裕文である。この鹿子自身、「よりあい」の世話人、早い話がボランティアで、編集者の仕事がなくなってどん底の生活を送っているときに「よりあい」と関わり始め、そのせいもあって食えない生活が続いていた。彼の不遇の人生も「よりあい」の歴史とあわせて紡ぎ出されていて、このあたりの個人史も本書の魅力である。
 著者の文章は躍動していてそれ自体が面白く、登場する「よりあい」の関係者(下村恵美子や村瀬孝生)も魅力的に描かれる(かなり誇張されているようだが)。「よりあい」自体も魅力的だし、関係者の志も痛快である。老人を狭い環境に押し込め世間と隔絶させるのではなく、環境の中で当たり前に存在し周囲と溶け合うようにするという発想も、人間的で気持ちが良い。この介護施設が、ある一人の老人の面倒を見るところから始まったというのも実にユニークである。
 本文は全編読みやすく、どんどん読み進められるし、この介護施設に興味を惹かれること間違いなしだが、「バカ」や「アホ」などの罵りの言葉が頻出するのが興を削がれる。せっかく良い話で心地良くなっているのに、こういう配慮のない表現が続出すると少し気分が悪くなる。著者の個性と言えばそれまでだが、少なくとも僕はこの人の文章をまた読みたいとは思わなかった。下村恵美子や村瀬孝生には興味を持ったが。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『いま助けてほしい 〜息子介護の時代〜(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『老人漂流社会(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『野田明宏先生のファンの皆様へ』
by chikurinken | 2016-08-24 07:23 |
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