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竹林軒出張所

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『母と子 あの日から』(ドキュメンタリー)

母と子 あの日から 〜森永ヒ素ミルク中毒事件60年〜(2016年・NHK)
NHK-Eテレ ETV特集

森永ヒ素ミルク事件について
もっと詳細に伝えてほしかった


b0189364_22591223.jpg 1955年、当時流通していた森永の粉ミルクに猛毒のヒ素が混入するという事件が起こった。その際、粉ミルクを摂取した子どもたちにヒ素中毒が発生し、死者130人を含む1万2千人以上の被害者が出た。森永側は、子どもたちに現れた障害について当初知らぬ存ぜぬを貫き、いったん事件は収束したかに思えたが、その14年後に関係者がもう一度事件を掘り起こして疫学調査を実施することで、子どもたちの障害がヒ素の影響であることを証明した。再び収束を図る森永に対して、被害者側は裁判や不買運動で対抗し、最終的に森永が被害者を生涯補償することで一応の決着がついた。これが世に言う森永ヒ素ミルク中毒事件である。
 僕が子どもの頃、ニュースで「森永ヒ素ミルク事件」という言葉を盛んに聞いていたが、それは発生14年後の事件再燃時の話であったことになる。元の事件が起こったのは僕が生まれる前の随分古い事件だったということを今回初めて知ったのだった。しかし古い事件ということになると、関係者は徐々に少なくなり、やがて事件は風化……ということになりかねない。このETV特集のシリーズは、先日の水俣病サリドマイドとあわせて、風化する前に少しでも映像として記録に残し、当時のことをよく知らない人々(僕も含まれるが)の中に記憶として残しておこうという意図が感じられて大変心持ちが良い。
 番組では、その時間の多くを被害者の現在を映し出すことに割いており、もちろんそれはそれで重要なことなんだが、僕としては当時の状況についてもっと詳しく知りたかったと思う。当時のニュース映像などももっとふんだんに使って当時の状況を我々に知らしめてほしかったというのが素直な感想である。もちろん被害者がヒ素によって精神障害や神経障害を負うことになったという事実は、今回被害者の映像を見るまでまったく知らなかった。一般的にはヒ素ミルク事件の被害の映像としては皮膚の変色が取り上げられるため、そういう被害が主なものかと思っていたが、はるかに重篤な被害があったことはまったく想像すらしていなかった。そういう点で彼らの今の苦しみを紹介するというのは歓迎なんだが、それにしても当時の状況があまりに大雑把にしか説明されていなかったため、このドキュメンタリーには少々物足りなさも残ったのだ。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『日本人は何をめざしてきたのか (3)(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『薬禍の歳月 〜サリドマイド事件・50年〜(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『水俣病 魂の声を聞く(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2016-07-27 22:59 | ドキュメンタリー
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