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竹林軒出張所

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『和解』(本)

b0189364_7353180.jpg和解
志賀直哉著
新潮文庫

自分には好ましく思われなかった

 志賀直哉の中編小説。タイトル通り、父との間の不和が解消するまでの過程を描く私小説である。この間、著者の身辺には、1人目の子どもが死に2人目が生まれるという出来事が起こる。また、尾道、京都、我孫子と引っ越しを重ねており、実家に足が向きにくい状況も語られる。といっても割合頻繁に実家を訪ねてはいる。もちろん実家にいる不和中の父とは会わないわけで、会うのは祖母や義理の母、妹たちとだけである。義理の母は2人の関係に気をもみ、祖母もずっと気にかけている。その一方で自分の妻や、死んだ子ども、生まれた子どもに対する実家の対応に不満を持ったりもする。心情も私小説らしく細かく書き綴られていくが、どことなく日記の域を出ないような印象を受ける。本文中には友人のM、Yなどが出てくるが、Mは武者小路実篤、Yは柳宗悦であると推測できる。「画家のSK」は誰だか分からない(調べたところ九里四郎という人らしい)。
 文章は短いものを重ねていくという志賀直哉らしいもので、世間では彼の文章を名文と褒め称えているが、文章がうまいという印象はそれほどない。むしろ短い文章が拙さを感じさせるような部分もある。「自分は」が多用されるのも下卑た印象をもたらす。
 志賀直哉の人生を知るには良いが、小説としての面白さはあまりない。ただ他の作品(『大津順吉』や『好人物の夫婦』)が書かれたいきさつなども触れられていて、そこらあたりは資料的な価値があるかも知れない。ただしそれも志賀直哉ファンにとってはということだが。
★★★

参考:
竹林軒出張所『わたしの渡世日記 (下)(本)』
by chikurinken | 2016-07-18 07:36 |
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