ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『調べる技術・書く技術』(本)

b0189364_849172.jpg調べる技術・書く技術
野村進著
講談社現代新書

ノンフィクションの1つの見本

 ノンフィクション作家の著者が披瀝する「ノンフィクションの書き方」。
 「テーマを決める」、「資料を集める」、「人に会う」、「話を聞く」、「原稿を書く」、「人物を書く」、「事件を書く」、「体験を書く」の全8章構成で、ノンフィクションを書くときのノウハウを細かく伝授してくれる。たとえば取材依頼文の書き方から礼状の出し方まで、取材講座の授業さながらの内容である。しかも、当日は約束の時間ちょうどか1、2分遅れで訪問すべきということまで書かれており、こんなことまで書く必要があるのかと思ったりもする。だが著者によると、近ごろのライターには最低限の礼節を欠いている者が増えているため、こういうことまであえて書いたのだということらしい。ただしかし、ここに書かれていることは、著者が経験を重ねて得てきたような経験知のようなものまで含まれており、こういう企業秘密に属する類のものまでこうして公開した著者の態度には、ある種の高潔さを感じる。
 もっとも僕のように、実際のライターになろうと思ってこの本に接触したわけではない人間にとっては、こういった(前半部分の)一般的方法論は少々退屈ではある。無関係の我々でも俄然面白くなるのは後半部(「人物を書く」以降)で、実際にこれまで著者が書いた短いルポルタージュを紹介して、それについてどのような方法で取材を進めたか手の内を存分に見せるのである。そしてこの部分が、前半部の具体的事例として機能するというなかなか凝った作りになっているのだ。
 テーマがしっかりとしており、本書全体にそのテーマに基づく一貫性があって、しかも構成がよく練られている。この本自体が、ノンフィクションの1つの見本みたいになっていて、大変好感が持てる良書である。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ノンフィクションの崖』
by chikurinken | 2016-06-26 08:49 |
<< 『青年の海 四人の通信教育生た... 『平気でうそをつく人たち 虚偽... >>