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竹林軒出張所

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『底辺への競争 ヨーロッパ労働市場の現実』(ドキュメンタリー)

底辺への競争 〜ヨーロッパ労働市場の現実〜(2014年・デンマークDR)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

一歩先行くヨーロッパの労働事情

b0189364_7312887.jpg EUに東欧諸国が加盟して以来、東欧諸国の低賃金労働者が北欧やドイツ、イギリスに派遣労働者として送られている。結果的に当時国ではその国の労働者たちが職を失い、同じ職種の賃金も低下する。だが、被害に遭っているのは当事国の労働者だけでなく、派遣される側も非常に痛い目を見ているというのが実情である。
 現実には、発注元と労働者の間を仲介する派遣会社が間に数社入って、賃金を搾取しているという実態がある。番組ではスウェーデンの工事の例が取り上げられていたが、発注元は時給7000円で雇用契約を結んでいるが、間に複数の派遣会社が介在してピンハネしているため、労働者に辿り着く段階では時給500円になってしまう。
 仲介業者はこのように甘い汁を吸っているにもかかわらず、労働者が作業事故でケガを負ってもそれに対して補償することなく、本国に強制的に送り返すだけである。結果的に派遣労働者が体の良い使い捨てになっているという現状がある(当事国でも外国人が肉体労働に就労するようになってからその分野の事故率が上がっているらしい)。また、派遣会社から賃金を支払われていない労働者さえいる。しかもそれどころか、賃金の支払いを求めて組合活動を始めた労働者が、逆に破壊行為で訴えられたケースすらある。とにかくこの番組で取り上げられている派遣業者はかなりのブラックで、法に触れようが触れまいがやりたい放題である。まるで19世紀のヨーロッパ下層社会のようである。
 派遣業者が賃金のかなりの部分をピンハネするというケースは日本の原発労働でも見られる構図で、しかも違法なブラック企業も今の日本では多々見受けられる。したがってこの番組で取り上げられているような状況も対岸の火事ではまったくないが、ただし今の日本では外国人労働者を安く使い倒すこういった大がかりなシステムはまだ確立されていない(「労働研修生」という名の低賃金労働はシステム化されているが)。今後日本でもグローバリズムが進んでいくと、同じような状況が国内に出現し、従来型の労働者の生活がさらに脅かされることになりかねない。派遣が増えている昨今、一段と人々の労働環境が悪化する可能性があるわけで、現在のヨーロッパの労働状況は今後も注視していく必要がある問題だと思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告(本)』
竹林軒出張所『スペイン危機を生きる(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『低価格時代の深層(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『原発ジプシー(本)』
by chikurinken | 2016-05-29 07:32 | ドキュメンタリー
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