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竹林軒出張所

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『パソコンを置いて森で暮らそう』(ドキュメンタリー)

パソコンを置いて森で暮らそう(2014年・加Drift Productions)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

b0189364_821978.jpgカナダ版『北の国から』

 現代の忙しすぎる生活に疑問を持ったあるテレビ・ディレクスターが、9カ月間休暇を取り、家族5人だけで森の中で生活をしようと試みる。その一部始終を映像で追ったドキュメンタリー。タイトルに「パソコンを置いて」と付いているが、パソコンについてはドキュメンタリー内で特に触れていない。もちろん移住前は生活の一部としてパソコンが存在していて、そういう文明の利器を持ち込まないという生活を新しく始めるわけだが、パソコンが特にどうこういうことはない。なぜこのような邦題を付けたかは疑問。
 さて、新生活を送るのはカナダ、ユーコン川ほとりの森の中にある山小屋で、街から結構距離があり、車やカヌーなどを使ってさまざまな食料や生活必需品を持ち込む。山小屋には電気や水道はないが、すべてが自給自足というわけではない。むしろ150年くらい前の北米の生活様式という感じで、『大草原の小さな家』みたいな雰囲気がある。決して文明をすべて拒否するというわけではない。
 それでも、自分たちで倉庫を作り、トイレを作り、燃料は森の薪から得るという具合に、基本的には自分たちの力でなんでもまかなう。本来の目的が、子どもたちと接することが少ない現代の生活を少し変えたいということで、過剰に大上段に構えていないのである。とは言え、今の我々の常識から考えると、ちょっとキャンプに行くというような雰囲気ではない。まさしく『北の国から』のような世界でかなり本格的。
 3人の子どもたちとも1日中接することになり、関係が緊密になっていく。また、ゲームやネットがないため、楽しみは自分たちで工夫して生み出す。料理をはじめとする生活にもふんだんに時間をかけなければ生きていけないため、生活は結構忙しくなる。それでも家族との関係は、都市生活と比べると格段に濃厚である。
b0189364_824773.jpg 山の中でのこういう生活も一度はやってみたいとは思うが、彼らの環境は少々厳しすぎるようにも思う。なんせ冬には氷点下40゜Cを下回り、春先にはクマが小屋の近所をうろつくほどである。春先にはこれまで凍っていた川の水が融けてこれも危険。したがって森の生活を送るにしても、これほど過酷な環境は初心者には無理。それくらいのハイレベルの環境で人間が生きていくとなると、人間のあるべき姿みたいなものが現れてきて(これについては映像から窺われる)非常に興味深い。地に足を付けた人間の姿というものが見えてくる。これを見ていると、やはり人は環境の中で活かされているのだということが改めて分かる。 9カ月間という期間限定ではあるが、決して甘えが許されない自然環境で生活を楽しみ、それをしっかり記録したという点で、貴重なドキュメントになっている。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『世界の川を旅する(本)』
竹林軒出張所『風に吹かれてカヌー旅(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ダムはいらない! 新・日本の川を旅する(本)』
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』
by chikurinken | 2016-05-24 08:03 | ドキュメンタリー
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