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竹林軒出張所

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『巨人と玩具』(映画)

b0189364_815989.jpg巨人と玩具(1958年・大映)
監督:増村保造
原作:開高健
脚本:白坂依志夫
出演:川口浩、野添ひとみ、高松英郎、小野道子、伊藤雄之助

宣伝の功罪を
めまぐるしいテンポで描き出す


 開高健原作の同名小説『巨人と玩具』の映画化作品。
 サントリー宣伝部出身の開高健が書いた話であるためか、この物語の舞台も製菓会社の宣伝部である。話の中で、商品の中身云々ではなくひたすら宣伝を駆使して売上を伸ばすべしという考え方が披露されるが、これなんかはサントリー宣伝部を彷彿とさせるエピソードである。
 主人公は、ワールド製菓宣伝部に勤める若い男、西(川口浩)。ワールドは、キャラメルのシェアでライバルのアポロ、ジャイアンツと熾烈な競争を繰り広げている。いかにして売上を伸ばしシェアを増やしていくかという戦いを取り仕切るのが宣伝部の課長、合田(高松英郎)。景品を付けたり、キャラクターモデル(野添ひとみ)を発掘したりという戦略を駆使するが、この合田も西もだんだん闇の部分に引きずり込まれていくというようなストーリーである。
 企業の過剰な宣伝活動というピンポイントなテーマで、この時代の映画の素材としては珍しい。それに、テンポが非常に速いのもこの時代の映画としてはかなり珍しい。この時代の日本映画といえば、まったり進みすぎて現代人から見るとイライラすることの方が多いものだが、この映画はとにかく展開が速い。あまりに急展開であるため、考えようによってはダイジェスト版みたいにも見える。実際にはこの展開の速さについてはネガティブな印象はなく、澱んだ感じがないのが良いリズムを生んでいて小気味良いくらいである。おそらく移り変わりが過剰に速い「現代社会」を描くためにこういった表現をしているのではないかとも思う。「合理的現代人」の象徴である合田課長が特にテンポ良く感じられるのもそういった意図を感じる部分である。
 1960年代は菓子類の景品がかなりエスカレートしていて、この映画で描かれている世界が実際にあったわけで、しかもキャラクターを商品とリンクさせたりすることも多くなる(アトム、鉄人など)。一方で、この時代の前か後かは分からないが、過剰な景品に対しては行政によって一定の歯止めがかけられるようになったという話も聞いたことがある。そのせいかどうか知らないが、サントリーなどは、テレビでイメージ広告を繰り広げることで、消費者に一種の洗脳状態を作り出して商品を売りさばくという方向に走り、逆にそういった売り方やおしゃれな広告が世間の評価を集めたりするという異常な80年代を迎えることになる。開高健もそれに伴ってマスコミへの露出が多くなっていたという記憶がある。
 そういうイメージがあったため、開高健が宣伝業界を風刺したこういう作品を書いていたというのが意外ではある。過剰な宣伝合戦の異常さ、バカバカしさが描き出されていてとても良い。
 そしてこの映画でもそれがうまく表現されている。それにやけにエキストラが多かったりするのは、絵作りに贅沢をする大映ならではである。なお、主演の野添ひとみは、同じく主演の川口浩とその後結婚。川口浩は探検隊の隊長として活躍し、高松英郎は殺人柔道技、地獄車を編み出すのであった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『妻は告白する(映画)』
竹林軒出張所『氾濫(映画)』
竹林軒出張所『姉妹(映画)』
by chikurinken | 2016-05-05 08:02 | 映画
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