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竹林軒出張所

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『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生』(本)

b0189364_813554.jpg聞き書き 倉本聰 ドラマ人生
倉本聰、上村英生、尾張めぐみ編
北海道新聞社

戦後のドラマを語り尽くす
倉本聰編


 脚本家、倉本聰のロング・インタビュー。北海道新聞の記者が倉本に密着して13回に渡ってインタビューを敢行。それをまとめたのが本書である。インタビューは280ページに及び、幼少期から成長期、自分の作品や俳優についてまで広範囲に渡って語られている。そのため倉本聰周辺のことがかなり分かる。
 また他でしばしば語られているような話も含まれており非常に網羅的である。たとえば先日NHK-BSで放送された高倉健の特集番組で『駅』のエピソードが語られていて興味深かったが、そのエピソードもこの本に含まれている。

(『駅』で高倉健演じる三上が)倍賞千恵子さんとできちゃうっていうシーンがあって「あたし、声立てなかった?」って言うと「そんなことないよ」と答えときながら、心の中の声で「樺太まで聞こえるかと思ったぜ」とつぶやくせりふがあったんです。健さんが「倉本さん、これは倍賞さんに失礼じゃないですか」ってクレームをつけてきたので、僕は「いや、しかしこの場面では必要ですね」と答えたんですが、説得するのに10分くらいかかりました。(本書p154)

 さらに東京を追われて札幌、富良野と移住する話も『100年インタビュー 倉本聰』で語られた内容と重複するが、こちらの本の方が詳細でいきさつが分かりやすい。
 本書の中で特に面白かったのが、これまでの作品が書かれた背景について語られた箇所で、こういうのは資料的な価値もあり、それだけでもこのインタビュー本は大きな価値があると言える。『北の国から』『冬の華』『昨日、悲別で』『うちのホンカン』『前略おふくろ様』についても当然いろいろなことが語られているが、『駅』や『冬の華』はともかく、『昨日、悲別で』に対する思い入れが大きいのには少々驚き。僕自身は駄作だと思っていたが、今でも根強いファンがいるという。DVD化の要請も来るらしいが、タップ・シーンで使っているマイケル・ジャクソンなどの音楽の著作権料が高いため、DVDを作れないらしいのだ。なんだか夢も希望もない話だが、倉本聰の話にはこういった現実的な話が非常に多く、いかにも業界人という印象が残る。全体的にこの人自体に業界人的な軽さが見られ、そういう点でこの人に対するイメージが少し変わった。
 当然のことながら『北の国から』にはかなりの紙面が割かれていて、富良野での『北の国から』ビジネスについても詳細に語られる。あまり読んでて気持ちの良い話ばかりではないが、放送を取り巻く現実みたいなものも窺われる。いずれにしても各作品には相当のページが割かれ、倉本聰自身がそれに対してあれこれと内幕みたいな話を語っているため、それぞれのドラマのファンにとっては非常に面白いと思う。
 倉本聰の作品群をこうやってレビューしてみると、やはり彼のピークは70年代後半から80年代と感じる(『駅』、『北の国から』、『ライスカレー』がマイベスト)。だから他の時代の作品にもこの「傑作の森」の時代の質を要求するのはある意味酷なんではないか……などと感じた次第。傑作が3本あれば芸術家としては超一流と言える。
 巻末に第II部として、「北の国から 放送開始30周年」というタイトルで、北海道新聞に連載された企画記事が掲載されているが、あまり必要ないかなという記事である。もっとも一種のサービスだと思えばそんなに悪くない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『100年インタビュー 倉本聰(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『駅 STATION(映画)』
竹林軒出張所『冬の華(映画)』
竹林軒出張所『ライスカレー (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『昨日、悲別で (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『うちのホンカン(ドラマ)』
竹林軒出張所『前略おふくろ様(1)〜(26)(ドラマ)』
竹林軒出張所『前略おふくろ様II(1)〜(24)(ドラマ)』
竹林軒出張所『玩具の神様 (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『その時あの時の今 私記テレビドラマ50年(本)』

by chikurinken | 2016-04-03 08:16 |
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