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竹林軒出張所

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『いまに至る道 ガラス』(ドキュメンタリー)

いまに至る道 ガラス(2015年・英米Nutopia)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

ガラスはだだ者じゃない

『いまに至る道 ガラス』(ドキュメンタリー)_b0189364_23251866.jpg 前回紹介した「灯り」は、Nutopiaという製作局が作った『いまに至る道』というシリーズの1作で、今回NHKでは4作品が放送されている。第1回目は「清潔」というタイトルで下水道やなんかが紹介されていたが、あまり面白くなかったので途中で見るのをやめた。前回の「灯り」は第2弾でまずまずという内容だったが、第3弾の「ガラス」はもう少し突っ込んだ内容で、こちらは割合楽しめた。
 発明が現代の生活にどのように関わっているかというのがテーマなのは「灯り」と同様だが、ガラスの場合は灯り以上にいろいろな分野で大きな役割を果たしている。こういう事実は、あらためて教えてもらわないとなかなか気付かないものである。たとえば顕微鏡や望遠鏡、カメラのレンズなどは当然透明ガラスが必要だが、こういった機器が現代社会にとってどれほど大きな意味を持っているかは言われてみないとピンと来ない。そういう意味で「ガラス」という題材はなかなか面白く、なかなか良い選択肢であると思う。
 ガラスは古代メソポタミアですでに作られていたことが分かっており、その歴史は非常に古い。だがそれが生活に役立つものとして本格的に使われるようになったのは、13〜14世紀にイタリアのベネツィアで透明ガラスが発明されてからである。
 透明ガラスはやがて眼鏡の発明を促したが、この眼鏡は、活版印刷術の普及に伴い本を読むための道具として普及していった。その後、顕微鏡や望遠鏡を発明したのが眼鏡職人だったというのも示唆的である。だがこの顕微鏡はミクロへの目を開き、望遠鏡は宇宙への目を開くことになり、新しい世界を目の前に提示する役割を果たした。結果的に生物学や医学、天文学、物理学が大きく進展することになる。またレンズを使用することで写真術が進展し、静止画、動画の記録が実用化される。こういうふうに見ていくと、ガラスが現代文明において大きな役割を果たしてきていることが確かによく分かる。少しだけ目からウロコである。
 こういう少し目新しい視点を入れてくれると、見るこちら側も楽しめるし、番組のグレードもグッと上がる。このシリーズの第4弾として「冷却」が先日放送されているが、こちらもいずれ見てみようと思っている。「冷却」という素材を取り上げたのはなかなか鋭いのではないかと思っているが、「ガラス」並みに面白い視点が披露されているかどうかはよく分からない。期待だけはしておこうと思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『いまに至る道 灯り(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史(本)』
竹林軒出張所『発明はいかに始まるか(本)』
竹林軒出張所『マイセン 幻の磁器の城(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2016-02-04 07:24 | ドキュメンタリー
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