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竹林軒出張所

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『新・映像の世紀 第4集』(ドキュメンタリー)

新・映像の世紀 第4集 世界は秘密と嘘に覆われた
(2016年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

疑心暗鬼と欲が世界を混乱させた

『新・映像の世紀 第4集』(ドキュメンタリー)_b0189364_8154674.jpg 『新・映像の世紀』も佳境に入ってきた。今回は共産圏政府とアメリカ政府がいかに国民を抑圧し、騙してきたかがこれでもかと語られる。
 共産圏が国民に密告を奨励していたことはつとに有名だが、今回は特にアメリカのFBIとCIAによるスパイ活動、破壊活動に焦点が当てられていた。50年に渡りFBI長官を勤めたフーバーは、スパイ活動で大統領を含む政治家たちの弱点を握り、行政と立法に揺さぶりをかけ続けたというし、CIAがリベラルなイラン政府を転覆させるなど非人道的な活動を続けていたことも紹介される。ロナルド・レーガン大統領が当時のソ連を名指しして「悪の帝国」などと批判したが、どちらが「悪の帝国」なんだかわかりゃしない。なおこのロナルド・レーガン自身、若い頃、FBIのスパイだったらしく、赤狩りでハリウッドの映画人を失脚させることに大いに貢献したらしい(結果的に売れない俳優だったレーガンが名前を上げることになった)。この事実は今回初めて知った。
 第二次大戦終了後、ソ連とアメリカがナチスの軍事技術者を引き抜きあったという事実も明らかにされている。つまり米ソはナチスの軍事技術の正当な継承者ということになる。これが核開発競争を誘発して、結果的にキューバ危機を招くことになった。1962年10月28日にはまさに一触即発の事態になったが、ソ連内のアメリカのスパイからもたらされた情報が役立ち危機回避につながったという話は、非常にスリリングである。一方でキューバ危機のときに、ソ連に核先制攻撃を仕掛けろとケネディをそそのかした空軍参謀総長カーティス・ルメイの話も出てくる。あの国の支配者にはまともな思考ができる人が少ないのかと思ってしまうような事実であえる。
『新・映像の世紀 第4集』(ドキュメンタリー)_b0189364_816438.jpg またアメリカのベトナムへの介入も当然のごとく紹介される。同時にソ連がアフガニスタンに軍事侵攻したこともベトナム戦争のソ連版として扱われており、これが、現在の中東の不安定要素を作ることになったこともしっかり紹介されている。
 全編、大国のエゴで人々が苦しめられてきた歴史が次々に当時の映像と共に披露され、大きなインパクトがある。これまで『新・映像の世紀』シリーズは物足りないと感じてきたが、この第4集は別で、現在に通じる歴史として現代史にアプローチしている点を評価したい。また権力者が自らの欲のために世界を混乱に陥れてきたという現代史の側面をあぶり出しているのも素晴らしい。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『新・映像の世紀 第1集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『新・映像の世紀 第2集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『新・映像の世紀 第3集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『新・映像の世紀 第5集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『新・映像の世紀 第6集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀 第5集〜第8集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀 第9集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『もうひとつのアメリカ史 (5)〜(7)(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『フルシチョフ アメリカを行く(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『未解決事件File08 JFK暗殺(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『博士の異常な愛情(映画)』
by chikurinken | 2016-01-31 08:16 | ドキュメンタリー
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