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竹林軒出張所

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『もうひとつのショパンコンクール』(ドキュメンタリー)

もうひとつのショパンコンクール 〜ピアノ調律師たちの闘い〜(2015年・NHK)
NHK-BS1 BS1スペシャル

新趣向のグレートレースものか
しかし目の付け所は抜群


b0189364_7505291.jpg ショパンコンクールは、5年に一度開かれるピアノのコンクールで、もちろんピアノの詩人、フレデリック・ショパンを記念した大会である。当然ながら、ピアニストを志すアマチュアピアニストがピアノの技術を競うコンクールなんだが、実はその裏で、ピアノ製造会社の間でも熾烈な競争があるぞというのがこのドキュメンタリー。
 とは言ってもチャイコフスキーコンクールと違って製造者を対象としたコンクールがあるわけではない。要するに、出場者がコンクールで使用するピアノとして(4つの製造会社の)4台が用意されていて、出場者が各自使用するピアノを選ぶことから、こちらでもメーカー間で競争が起こるわけである。優勝者が使用したピアノであれば、それだけ名前が売れるということになる。
 で、2015年の第17回大会では、世界のピアノ製造会社からスタインウェイ、ヤマハ、カワイ、ファツィオリの4社が選ばれた。スタインウェイと言えばピアノの名門で、世界中のピアニストから愛されるピアノ。ヤマハはこのところ世界でシェアを伸ばしていて、生産台数世界第一位を誇るメーカーである。カワイも販売台数世界第二位を誇り、開催地のポーランドでも人気が高いらしい。ファツィオリはイタリアの新興メーカーで、昨今独特の音色で人気を集めており、他の同様のコンクールでも近年結果を残している。
 各社は、それぞれ最高の1台をコンクールに提供し、同時に調律師としても一流の人材を派遣する。ピアノは調律が命である(らしい)。今回のコンクールでは、ヤマハとカワイが日本人の調律師であるというのはさもありなんという感じだが、イタリアのファツィオリの調律師も日本人であるというのは少し意外。つまり4社のうち3社は日本人の調律師が担当することになる。各社は、音に趣向を凝らしたり、あるいは出場者に音の好みを訊いたりとさまざまな工夫をするが、結局人気が集まったのはヤマハとスタインウェイで、ファツィオリに至っては、一次予選参加者78人の内わずか一人しか選ばなかったという有様である。音作りの方向性(調律師はショパンらしい繊細な音を目指していた)が参加者に受け入れられなかったためと考えられるが、しかもその参加者も一次予選で早々に脱落してしまったため、結局ファツィオリは一次予選で撤収することになった。
b0189364_7511419.jpg 最終予選まで残ったのはヤマハとスタインウェイで、最終的に5人対5人。結局1位がスタインウェイ、2位がヤマハ、3位がスタインウェイという結果に落ち着いた。
 目の付け所が非常に面白いドキュメンタリーだが、演出はどことなく、最近BSでよく放送されているグレートレースものと似ていて、こういう職人芸で競技性を強調するのはいかがなものかという気もしなくはない(チャイコフスキーコンクールみたいに実際に製造者の競技会があれば話は別だが)。むしろ次回はチャイコフスキーコンクールの楽器製造部門に注目する番組を作ったらどうだと思うが、なんだか今回の番組も(グレートレースものみたいに)続編が作られて一つの企画として続けられそうな(嫌な)予感がする。ただショパンコンクールが開かれるのは5年に一度なので、次回作られるとしたら5年後ということになる。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ピアノマニア 調律師の“真剣勝負”(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『バイオリンの聖地クレモナへ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ピアノの詩人ショパンのミステリー(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『私を救ったショパンのバラード(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『灼熱の大地を疾走せよ!(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2016-01-11 07:52 | ドキュメンタリー
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