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竹林軒出張所

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『お早よう』(映画)

b0189364_823676.jpgお早よう(1959年・松竹)
監督:小津安二郎
脚本:野田高梧、小津安二郎
撮影:厚田雄春
美術:浜田辰雄
音楽:黛敏郎
出演:佐田啓二、久我美子、笠智衆、三宅邦子、杉村春子、設楽幸嗣、島津雅彦、泉京子、高橋とよ、沢村貞子、東野英治郎、長岡輝子、殿山泰司

小津映画の小ネタ集

 小津安二郎の映画だが、嫁入り映画ではない。この頃の小津は、少なくとも松竹ではほとんど嫁入り映画ばかり撮っていたため、子どもの世界を中心に描いた本作は少々異質と言える。とは言っても小津調は健在で、キャストも他の映画と共通である。
 舞台は堤下の文化住宅地で、そこに住む人々の日常が描かれる。小津映画らしく大した事件もなく、庶民の日常が淡々と進んでいく。近所の人々の間でちょっとした波風が立ったりするが、破壊的な結末になったりすることはもちろんなく、それなりの日常が繰り返される。ある意味で非常にリアルであり、言葉通りの「リアリズム」である。(家電としての)洗濯機やテレビなど、当時の世相を反映した内容も小津映画としてはちょっと異色の部類に入る。
 先ほど書いたように子どもたちが話の中心であり、子どもの世界から見た大人たちという構図が『生れてはみたけれど』と共通している。子どもたちにあまり可愛げがないのも共通。総じて小津映画に出てくる子どもたちはあまり可愛げがない。
 あくまでも日常風景といった感じの映画なので、取り立ててどうということもないんだが、シナリオはよく練られてている。小津映画の小ネタ集みたいな内容ではあるが、最後の佐田啓二と久我美子の会話は、この映画の「お早よう」のモチーフとつながっていてなかなか面白い(ちょっとやり過ぎの感はある)。
 今回見たのはNHKで放送されたデジタルリマスター版であるが、画像は非常にきれいで、この頃の映画によく見られる細かく揺れるようなブレもない。どの画面にも概ね赤が入っているのは『彼岸花』と共通で、画面がきれいになったことで赤がよく映えている。リマスターされた小津映画は映像自体が魅力的で、さすがの職人芸と感心する。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『彼岸花(映画)』
竹林軒出張所『秋日和(映画)』
竹林軒出張所『秋刀魚の味(映画)』
竹林軒出張所『小津安二郎・没後50年 隠された視線(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『デジタル・リマスターでよみがえる名作(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『絢爛たる影絵 小津安二郎(本)』
竹林軒出張所『青春放課後(ドラマ)』
by chikurinken | 2015-12-19 08:02 | 映画
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