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竹林軒出張所

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『アジア巨大遺跡3 始皇帝陵と兵馬俑』(ドキュメンタリー)

アジア巨大遺跡第3集 地下に眠る皇帝の野望 〜中国 始皇帝陵と兵馬俑〜
(2015年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

新しい始皇帝観

『アジア巨大遺跡3 始皇帝陵と兵馬俑』(ドキュメンタリー)_b0189364_8472755.jpg NHKスペシャルの『アジア巨大遺跡』という4回シリーズの第3回目。第1回目の「アンコール遺跡」も見たかったが見逃してしまった。
 第3回目は中国の秦・始皇帝陵とその周辺で見つかった遺跡群から、始皇帝の偉業を再評価しようというもの。始皇帝といえば、中国全土を初めて統一したが、その暴政ぶりばかりが喧伝され、おそらく出所は『史記』なんだろうが、「始皇帝=暴君」という図式で語られることが多い。
 しかし『史記』が、秦を継ぐ王朝である漢で書かれた史書であることを考えると、これを100%鵜呑みにすることはできない。一般的に前の時代が、今の時代を正当化するために悪く盛って描かれるのは世の常である。日本でも長きに渡って「江戸時代=暗黒時代」という扱いだったことからもわかる(今の日本の支配層は明らかに維新政府の後継機関である)。
 で、この番組だが、始皇帝という人物が、統一王朝を作っただけでなく、その統一システムを後世に残そうとしたことが窺われるという主張のドキュメンタリーで、そのあたりの事情が、近年の始皇帝陵周辺の発掘によって明らかになりつつあると語る。この始皇帝の業績の価値を熱弁するのは、国際政治学者のフランシス・フクヤマ。なんだか畑違いのようで、なぜこの人を引っ張り出してきたのかはよくわからないが、まあともかくこの人が出てくる(実は顔を見たのは今回が初めて)。
『アジア巨大遺跡3 始皇帝陵と兵馬俑』(ドキュメンタリー)_b0189364_8462386.jpg 秦以後、中国大陸では代々統一王朝が続くことになるのだが、これこそ始皇帝の業績、つまり統一システム(通貨や度量衡の統一、中央集権制)を後世に残そうとした努力が実ったものだという主張が展開される。確かにこれは1500年以上に渡り小国分立状態だったヨーロッパと比較すると興味深い事実で、それは僕自身も疑問に思っていた部分ではある。もちろんその疑問への回答としては少々心許ないのではあるが、ましかし、従来悪者扱いだった始皇帝を見直すという点では目新しい視点である。とは言っても番組自体は、全体的にまどろっこしく退屈だった。そういう部分がマイナス点。
★★★

参考:
竹林軒出張所『史記 (横山光輝版)(本)』
竹林軒出張所『現代語訳 史記(本)』
竹林軒出張所『項羽と劉邦 (1)〜(3)(本)』
by chikurinken | 2015-11-13 08:48 | ドキュメンタリー
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