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竹林軒出張所

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『丸竹夷にない小路』(ドキュメンタリー)

丸竹夷にない小路(2008年・NHK)
NHK-BSプレミアム ハイビジョン特集

b0189364_8213154.jpg道に歴史あり

 京都市は碁盤目状に区画割された平安京が元になった街であるため、今でも大きな通りが東西、南北に同じ間隔で並んでいて、そのために住所を示す場合も「東西(通り)南北(通り)東入ル」みたいな表記になる(地域が多い)。そのため京都では、この大通りを覚えるためのわらべ唄みたいな歌があり、子どもたちに歌われているという(僕自身はこの歌を京都で聞いたことはない)。有名なものの1つに「丸竹夷二押御池、姉三六角蛸錦(まるたけえびすにおしおいけ、あねさんろっかくたこにしき)」(この後まだ続く)というものがあり、前から順に丸太町、竹屋町、夷川、二条、押小路、御池、姉小路、三条、六角、蛸薬師、錦小路の各通りを表している。これは東西に貫く、いわばx座標の通りであり、南北の通りの歌もあるらしい。この番組のタイトルに入っている「丸竹夷」というのはこの歌から取っているもので、あの歌を知っていればすぐにピンと来るわけ。タイトル自体は「丸竹夷にない小路」となっているんだが、つまりは、歌で歌われているような大通りではなく、京都のあちこちに点在するその他の小路にスポットを当てようというのがこのドキュメンタリー。
 視点は非常に斬新だが、そもそもこんなピンポイントな企画で番組ができるのか疑問。ではあったが、実は十分面白味のある素材であることがこのドキュメンタリーからわかる。そこはやはり1200年の歴史が背後に蠢いているせいかわからない。
 京都の碁盤目自体の幅が元々かなり大きいものであるため、必然的にその大きな碁盤目の間に小さい道ができていき、それでも道同士の間隔が大きすぎればさらに小さい道がその間にできていくというのは、ある意味必然である。京都市内にはそういった小さい通りがあちらこちらにあって、こういったものを路地(京都では「ろーじ」と発音する)と言うんだそうだ。あるいは辻子(づし)とか突き抜けなどとよばれたりもするらしい。で、こういった通りには、時代を感じさせて風情があったり、あるいは過去から連綿と続く町衆の生活が息づいていたりする、この番組によると。京都に住んでいたときは、まったくそういうことを意識することはなく、むしろ紛らわしい通りに迷って一人憤慨したりしていたんだが、こういう切り口で見せられると、確かにそうだと納得させられる。そういう点でまず、その鋭い切り口を評価したいところである。
 番組自体は、ミニドラマ(甲本雅裕、田畑智子が出演)が縦糸になっていて、そこに上七軒、宮川町、七条界隈の路地ドキュメントを横糸として織りなすという構成で、考えようによってはこれも縦糸と横糸で碁盤目状ということなのか。全体的な構成や雰囲気は、『京都人の密かな愉しみ 夏』にかなり似ている。ナレーションは田畑智子が京言葉でやるが、きれいな京都言葉が聞けてこちらも良い。
 路地は京都の生活が息づいている場所であることを実感しながらも、かつての路地周辺に住まう人が高齢化し減っているという実情もあるらしい。最近では芸術家や職人の若者が入っている路地も増えていて、従来とは少々違う趣を見せはじめている。こういう通りでは芸術家や職人が簡単な店を出していて、小アーケードになっているような場所もあって、むしろかえって新しさを感じる。京都人は意外に新しもの好きという話を聞いたことがあるが、そういうことを含めて京都の伝統なんだろうなと思う。観光京都とは少し違った面が見られるドキュメンタリーである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『京都人の密かな愉しみ 夏(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『京都人の密かな愉しみ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『京都 冷泉家の八百年(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『平安京はいらなかった 古代の夢を喰らう中世(本)』

by chikurinken | 2015-11-11 08:22 | ドキュメンタリー
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