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竹林軒出張所

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『わたしたちの体は寄生虫を欲している』(本)

b0189364_836441.jpgわたしたちの体は寄生虫を欲している
ロブ・ダン著、野中香方子訳
飛鳥新社

いろいろなことを語っているが
とりとめがない


 これも看板に偽りありの本。『ハチはなぜ大量死したのか』のときもそうだったが翻訳本にどうしてこういうタイトルを付けるかなと思う。てっきり寄生虫の本だと思って読んだんだが、寄生虫について語られているのは6章構成のうち1章だけである。そもそも原題が『The Wild Life of Our Bodies(身体の中の野生)』なんだからことさら寄生虫を強調することもあるまい。ええ加減にせえよと思う。日本の出版関係者の見識のなさを疑う。
 さてボヤキはこれぐらいにして、この本は人間の身体の中に野性時代の痕跡が残っていて、それが今の我々の生活の中にもいろいろな形で顔を見せているというそういうテーマの本である。たとえばヒトは捕食(他の生物に喰われること)や毒害から逃れるために視覚が発達したとか、捕食者の幻影から逃れるためにいまだに未知の恐怖に怯える(それが不安、ストレス、恐怖症などを生み出す)とか、そういった類のことが書かれている。寄生虫については、かつて寄生虫と共生していたヒトであるが、ここ数十年の過剰な衛生状態と抗生物質のせいで、体内から寄生虫や微生物を追い出したことによって、そのことがさまざまな病気の病因になっているという主張が紹介されている。また人間が体毛を無くしたのは、ノミやダニなどの外部寄生虫対策だという説が紹介されている他、都市型農業建築(ビルの中で作物を作ろうという試み)についても1章割かれている。
 「ヒトは他の生物との関わりの中で現在の形に進化してきた」というのが本書のテーマで、それを忘れて自己中心的な世界を作ろうとするとしっぺ返しを受けるよというのが全体をつらぬく主張である。そのために自然との共生を取り戻すための試みがいろいろと紹介されているわけだが、書かれている内容が全体的に散漫で、何が言いたいのか途中で見失ってしまう。そのために構成が雑という印象も受ける。内容自体は興味深い事例が多いため最後まで読むには読めるが、あまり残るものがない。
 翻訳は素直な文章で読みやすく好感が持てるが、誤植が非常に多いのが困りものである。市販の本としてはかなり多い方だ。担当者はしっかり校正しておくように。それから瀬名秀明という人が序文を書いているがこんなものも不要である。こんなところに金をかけるなら校正に金をかけろと言いたい。商品として考えた場合、かなりグレードの低い本になってしまった。
★★★

参考:
竹林軒出張所『あなたの中のミクロの世界 (1)(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『あなたの中のミクロの世界 (2)(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『腸内フローラ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『あなたの体は9割が細菌(本)』
竹林軒出張所『ハチはなぜ大量死したのか(本)』
竹林軒出張所『ティッピング・ポイント(本)』

by chikurinken | 2015-10-19 08:36 |
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