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竹林軒出張所

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『“トロイカ”の功罪』(ドキュメンタリー)

“トロイカ”の功罪 ヨーロッパ緊縮財政は誰のため?
(2015年・独Arpad Bondy Filmproduktion)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

ハゲタカが国民の資産をむしり取っていく

『“トロイカ”の功罪』(ドキュメンタリー)_b0189364_81774.jpg ここ数年の間にアイルランド、スペイン、ギリシャとEU加盟国が立て続けにと財政破綻している。ギリシャの危機はいまだ収束しておらず、先日もEU側と財政支援をめぐって揉めていたのは記憶に新しい。
 こうした国が財政破綻した場合、EU、国際通貨基金、欧州中央銀行が支援に乗り出すわけだが、もちろんただで金を出すなどということはなく、金を出すからには口も出す。それもかなり厳しい条件を当事者の政府に対して突きつけることが知られている。
 破綻した国の政府側としては他に選択肢がないので、泣く泣くかれらの要求を受け入れるわけだが、そうすると上記の3つのステークホルダー(「トロイカ」と呼ばれている)が官僚を送り込み、政策を牛耳っていくことになる。言ってみれば「選挙で選ばれた国の代表者たち」(国の政治家たち)を、「第三者の官僚」(トロイカの役人)が顎で使うという状況が発生するわけである(こういった官僚たちは、選挙民に信任を問う必要がないため、政策に対する責任を伴わない)。
 で、実際にどんな政策を強要されるかというと、徹底的な経費削減、リストラということになるわけで、その結果、国の経済が回らなくなるためにその国の経済状況はますますひどくなる。しかもその国で本来破綻の責任を負うべき資産家たちに対して、その資産にメスが入れられることもない。それどころか、国有財産がこういった資産家に二束三文で渡ったりすることもあるという。結局は、財政支援によって国の本来のシステムが破壊されつくし、金持ちだけが得をするシステムが作り出されていく……というのがこのドキュメンタリーの主張である。
 ギリシャ危機の話を聞くと、ギリシャの放漫財政のつけが払わされているくらいにしか感じなかったが、このドキュメンタリーが伝える実態は少々違うようで、むしろEU内の先進国の企業に利用され、そのツケを払わされようとしているという見方の方が正しいように思えてくる。グローバリズムの問題点がここに集約されているようにさえ感じられる。財政破綻が間近な日本政府も、いずれは同じような目にあわないとは限らない。今後も注目していきたいトピックである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『スペイン危機を生きる(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ユーロ危機 〜欧州統合の理想と現実〜(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『日本国債(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『862兆円 借金はこうして膨らんだ(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2015-09-04 08:17 | ドキュメンタリー
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