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竹林軒出張所

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『腰痛・治療革命』(ドキュメンタリー)

腰痛・治療革命 〜見えてきた痛みのメカニズム〜(2015年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

腰痛の画期的治療法
信じる者は救われる


『腰痛・治療革命』(ドキュメンタリー)_b0189364_8231759.jpg これまでも何度か書いてきたが、NHKスペシャルの医療特集は、来たるべき明るい未来を謳うだけで眉唾なものが多かった。しかし今回は違う。慢性的な腰痛についての革命的な治験である。ただしその方法は至ってシンプルで、要は「大丈夫だと思い込む」というものである。
 僕なんかは、いったん腰痛持ちになったら一生関わっていくものと思い込んでいたので、腰には随分気をつけてきたつもりだ。だがしかし、実際ギックリ腰などは発症時こそ強烈な痛みが出るには出るが、3カ月以内に完治するらしい。ただしその後、再発するのではないかという不安が、脳の中の痛みを抑える部位(DLPFC)の活動を抑制するため、この部位がだんだん小さくなり、ちょっとした痛みも過剰に感じるようになるというのが慢性腰痛(3カ月以上続く原因不明の腰痛)の仕組みなんだそうだ。したがってこのような不安を排除し、この部位(DLPFC)の活動を復活させれば、慢性腰痛のほとんどは完治するというのがこの番組の主旨。
 そのために具体的に何をするかというと、まず腰痛の仕組みを患者に周知させ、慢性腰痛は気持ちの問題であるということを知らしめる。番組で実際に腰痛持ちの175人にこういう類の映像を何度も見てもらったところ、この段階で68人(38%)の患者の腰痛が改善していた。この時点で改善しなかった人々に対しては簡単な体操をやってもらう。背中を少しそらすという運動で、要するに腰を普通に使っても大丈夫だということを認識させる体操である。この段階でさらに32人の患者が腰痛を改善させていた(わずかこれだけで合計56%の人が改善した)。
 オーストラリアでは国を挙げてこのような腰痛撲滅キャンペーンを行っているらしく、一定の効果を発揮している。番組ではその様子も紹介していた。重症な患者については、数週間入院した上で認知行動療法を行うという。認知行動療法は一般的に欝病などの治療で行うものだが、番組で紹介されていた患者の結果は衝撃的で、それはまさに劇的な改善である。
 ともかく慢性腰痛は気持ちの問題であるということを認識すれば治るってんだから、実にシンプルである。日本政府も早くこういうキャンペーンを始めたら良いのにと思ったが、この番組自体、同種のキャンペーンの一環なのだろうかと思ったりもする。ましかし、テーマもしっかりしている上、余計なものを盛り込まずわかりやすく提示している点、大変よくできたドキュメンタリーと言える。
 ただ一つ気になったのは、以前NHKスペシャルで「腰痛は人間の身体の構造上必然である」みたいな番組があったような気がするが、あれとの整合性はどうなるんだろうということ。なんだか二枚舌みたいにも聞こえなくない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『新アレルギー治療 〜鍵を握る免疫細胞〜(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『腸内フローラ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『医療ビッグデータ 患者を救う大革命(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『病の起源 第1集 がん(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2015-07-24 08:24 | ドキュメンタリー
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