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竹林軒出張所

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『あなたの中のミクロの世界 (1)』(ドキュメンタリー)

あなたの中のミクロの世界
第1回 体は微生物の宝庫

(2014年・豪Smith & Nasht/仏Mona Lisa)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

人間は一人で生きているのではない

『あなたの中のミクロの世界 (1)』(ドキュメンタリー)_b0189364_8135928.jpg CGや顕微鏡映像でミクロの世界を紹介するドキュメンタリー。以前『見えざる力“植物の帝国”』というドキュメンタリーで、植物の微小世界をCGや顕微鏡映像で紹介していたが、テイストはあの番組とよく似ている。それもそのはず製作局が共通である(フランスのMona Lisa Production)。
 さて今回スポットが当てられるのは人体で、人間の周辺が微生物だらけというテーマである。腸内に細菌がいることぐらいなら昨今誰でも知っているが、顔の表面にも大量に微生物がくっついているというのは目新しい。それでもごく微小な菌類ならまあ理解の範囲だが、ダニの類も毛穴に潜っていて、夜になると表面にでてきて垢を食べるってんだから驚きである。1人の人間に数兆もの微生物が寄生しており、つまり1人の人間が生態系として機能しているということになる。なお、この微生物群だが、ほとんどが人間にとってプラスに働いているというから、菌がいるからといって過剰に抗菌に励むのはいけないのだ。
 このような微生物は、ときには人間の生き方まで左右している。たとえば脇の下などは本来匂いはないはずだが、脇の下に寄生する微生物が人体から出される分泌物を分解してそれを匂い成分に変えるというのだ。人間の体臭はこのようにして作られており、その体臭は元々身内を識別するために使われていたというから、寄生微生物は侮れない。もはや人の一部と言ってよい。
 また、トキソプラズマというネコに寄生する細菌については、ネズミの脳に寄生してネズミがネコの前で大胆に行動するようにする(ひいてはネコに捕獲され喰われることでトキソプラズマはネコに移動する)らしいが、これが人間に寄生すると、人間も恐怖を感じず大胆に行動するようになるという説が示されていた(トキソプラズマを保有している人はその他の人に比べて交通事故に遭う確率が2.6倍だそうで)。つまり人間の性格までもが、微生物の働きで決定されるというのだ。
 全体的にとりとめのない印象のドキュメンタリーだったが、紹介される内容は深く、目新しいことも非常に多い。なお、微生物の働きが人間の性格を決定するという説は、NHKスペシャルの『腸内フローラ』でも提唱されていた。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『あなたの中のミクロの世界 (2)(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『腸内フローラ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『あなたの体は9割が細菌(本)』
竹林軒出張所『失われてゆく、我々の内なる細菌(本)』
竹林軒出張所『土と内臓 微生物がつくる世界(本)』
竹林軒出張所『見えざる力“植物の帝国”(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2015-07-21 08:14 | ドキュメンタリー
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