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竹林軒出張所

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『戦後70年 ニッポンの肖像 (2) "バブル"』(ドキュメンタリー)

戦後70年 ニッポンの肖像 豊かさを求めて
第2回 "バブル"と"失われた20年" 何が起きていたのか

(2015年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

負けに不思議の負けなし

『戦後70年 ニッポンの肖像 (2) \"バブル\"』(ドキュメンタリー)_b0189364_8314258.jpg 戦後70年を記念して、戦後の日本の歩みを振り返ろうという企画で、実質的には日本現代史のレビューである。第2回目は、1980年代から始まったバブル経済とその後。
 バブルの時代は、個人的にはあの時代特有の軽薄さがイヤで、思い出すといまだに不快さが甦ってくるが、日本中が浮かれていた時代というイメージはある。だがなぜああいった狂騒が始まって、どのような経緯で推移したか、分析されたのをあまり見た憶えはない。あの時代は良かったとかあの時代は何かおかしかったみたいなことはよく見聞きするが。実際、この番組でも2人のゲスト(堺屋太一と野口悠紀雄)が出てきてNHKのアナウンサーと対談するコーナーがあるが、そういうようなことを語っていた。堺屋太一に至ってはあのバブルの時代、これはおかしい、絶対に悲劇的な最後を迎えると感じていたなどとぬけぬけと言っていたが、ホンマかいなと思ってしまう。後付けでわかったようなことを言う人たちはどこにもいるわけだが、こういうずるい言動をする大人になってはいけませんと子どもに言いたくなるのは僕がひねくれているからか。
 さて、バブルの時代がなぜ始まったかだが、80年代初頭、財政赤字に苦しむアメリカが金融緩和に踏み切ったことがその始まりとする。1985年のプラザ合意がさらにこれに拍車をかける結果になったとも。当時多大な貿易黒字を抱えていた日本に対して、内需拡大で貿易黒字を減らすようアメリカから圧力がかかり、結果的に日本の公定歩合引き下げに対する圧力が強まる。結局日本政府も公定歩合の引き下げに応じてアメリカの圧力をかわそうとするが、結果的にこれが庶民の財テクに拍車をかけることになった。
 要は、日本の銀行は利子が安いんで、日本で安い利息で資金を調達し、アメリカでこれを運用すれば(利息が高いために)それだけで利益が見込めるということになるというわけ。このためにアメリカから日本に資金が流れる形ができあがったという。こうして金が集まってくると、投資先として堅調と思われていた日本の土地に資金が集中する。そのために地価が高騰する。高騰する地価は投資先としてますます魅力を増す(何せ当時1年後に地価が2倍にはねあがったりした事例もあるぐらいだ)。こうして地価はどんどん高騰していくのであった。投資しておけば自動的に価値が高くなるということで「楽して儲けるのが正しい」という風潮が世間に広がってきて、これが異常な投機ブームの拡大につながったというわけ。
 ただ裏では、悪辣な地上げ(土地所有者を暴力などで追い出して土地を半ば強制的に接収する)が方々で起こっていたことも記憶に残っている。早い話、あの時代は、金のためなら何でもやるというような風潮が広まっていって、道徳律が無視されるようになったモラルハザードの時代だったわけだ。
 もちろんこういう風潮が永遠に持続するわけはないので、日本政府の金融引き締め政策を機に、異常な株価高騰は止まり、株安に転じたのであった。それにあわせて土地投機熱も醒め(儲からなくなるから当然である)、逆に異常な値が付いてしまった土地は処分不能になり不良債権化する。結局残されたのは金融機関が抱えるこうした不良債権の山だった。祭りのあとのゴミの山みたいなものだ。金融機関および日本政府は、その処理におおいに手こずって(誰も手を汚そうとしない無責任体質がここでも発揮される)、おかげでその後20年近く経済の低迷期を迎えることになる。これがいわゆる「失われた20年」である。
 今振り返って見ると、あの時代、親の財産を食い潰した上、借金して散財しているどら息子のようなイメージと重なってくるが、どことなく今の時代とも重なっているような印象がある。現在行政が進めている経済政策、いわゆるアベノミクスも、大量に借金して景気を浮揚させるという意図のようである。異常な投機ブームにならないのは今の日本にかつてほどの経済的な余力がないためだろうが、だが借金はいずれ返さなければならないのである。莫大な借金は、莫大な不良債権と比べものにならないくらい、処理が大変なことは容易に察しが付く。
 過去から何を教訓として学ぶかは歴史を勉強する上で必ず重要なテーマになるが、今の時代を見ると、どうも過去の教訓を生かせていないような気がするんだが、どうだろうか。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『戦後70年 ニッポンの肖像 (1) 高度成長(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『バブル 終わらない清算(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『マネー資本主義第4回(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ウォール街(映画)』

by chikurinken | 2015-06-16 08:32 | ドキュメンタリー
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